笑えないイタズラは犯罪
以前によく見ていたテレビ番組に『モニタリング』というものがある。素人や芸能人にドッキリを仕掛けることで、その反応を楽しむという企画。人間観察という意味で興味深く、一時期は毎週録画して見ていた。
だけど最近はまったく見なくなった。理由としてマンネリ化してきたというのがひとつ。同じパターンをマイナーチェンジしているだけなので、新鮮味がまったくなくなってしまった。
別の理由として、たまに笑えない仕掛けがあること。人によっては本気で驚かせてしまうことになり、場合によっては放送事故になりかねない。たとえば人によっては偽の幽霊に驚いて心臓発作が起きても不思議じゃない。あるいは逃げようとして大怪我をする可能性もある。だから見なくなってしまった。
笑えないイタズラは犯罪に等しい。『モニタリング』を見ていてそう感じることがあった。
そして今日観た映画も、まさに笑えないイタズラによる悲劇を描いたものだった。
2021年 映画#64
『グッド・ネイバー』(原題:The Good Neighbor)という2016年のアメリカ映画。
イタズラを仕掛けるのはイーサンとショーンという高校生。イーサンの家にIT機器を設置する。そして隣人の独居老人であるハロルドの家にカメラ等で仕掛けを施した。ハロルドは近所では変人と呼ばれている老人。そんな彼にポルダーガイストを体験させたら面白い映像が撮れるだろうという発想だった。
もちろんルールは決めた。直接的な危害を加えない。あくまでも電気を消したり、扉をリモコンで動かしたりという方法。期間も決めてモニタリングすることで、その映像を動画サイトにアップするのが目的だった。
最初は面白がっていた二人だけれど、やがて過激化していくイーサンの行動にショーンが戸惑う。ハロルドは奥さんを殺したという噂があり、おそらく地下室に何かを隠しているはず。どうしてもそれを暴きたいとイーサンが言い出す。
その理由は復讐だった。以前イーサンの両親が大喧嘩をして、母親が隣のハロルドに助けを求めた。ハロルドはイーサンの母を助け、さらにイーサンの父を叱った。そのことがきっかけで両親は離婚した。つまりイーサンの逆恨みということ。
ところがハロルドは愛妻家だった。病気の妻を自宅で看取り、その寂しさに耐えきれず鬱々とした日々を過ごしていた。そのことで変人扱いされているだけだった。ところがイーサンとショーンのイタズラは、ハロルドにとって妻の幽霊が現れているとしか思えない、
そしてある日、地下室で証拠をつかもうとしたイーサンが、あることをやらかしてしまう。そのことがきっかけとなって、ハロルドは妻の元へ行こうとして銃で自殺してしまう。
老人を自殺に追いやったことで裁判を受けるイーサンとショーン。誰もが二人に極刑を望んでいた。判事もそう思っている。だけど法律としては、家宅侵入罪しか問えない。保護観察と社会奉仕だけという、実質は無罪のような判決となった。
このあたりの映画の構成がうまくできていて、二人の高校生の罪の重さを知りつつも、それを裁くことができないやるせなさを感じさせる作品だった。ハロルド役のジェームズ・カーンが貫禄の演技を見せてくれる。サイコパスと思わせつつ、実は妻を愛する優しい男を見事に演じていた。
なんともいえない気分になるけれど、よくできた作品だと思う。
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