映画はコンビ、原作はチーム
面白かった映画に関して、原作が存在する場合は読むようにしている。なぜならそのちがいに興味があるから。
全体としての印象は、尺の制限をうける映画の宿命ゆえ、原作を削ぎ落としたという作品が多い。それが成功している場合もあれば、明らかに失敗しているケースもある。
でも数としては少ないけれど、単に原作を調整するのではなく、映画としての新しい世界観を提供している作品もある。昨日ある作品の原作を読み終えて、映画として、そして原作としても成功した作品だと確認できた。
2021年 読書#59
『アウトロー』下巻 リー・チャイルド著という小説。上巻についての感想は『やっとスタートラインに来た』という記事に書いているので参照を。
トム・クルーズの主演で映画化された『ジャック・リーチャー』シリーズの原作を追いかけている。ようやくこの映画化作品に追いついた。ストーリーは冤罪事件を捜査するジャックの活躍が描かれたもの。
ジャックは元陸軍の憲兵隊捜査官で、今回の射殺事件の容疑者であるジェームズ・バーの軍事裁判に関わったことがある。そのときの縁によって、無実の罪を着せられたジェームズがジャックを呼ぶところから物語はスタートする。
その詳細は省くけれど、映画と原作のちがいがとても面白かった。原作はまちがいなく面白い。このシリーズの最高作といってもいい。まぜ全部読んでいないけれどwww
だけどこの作品の映画化も素晴らしい。この物語のエッセンスを完璧に抽出して、新たな物語として再構築している。それゆえ原作とキャラのちがうトム・クルーズを起用することができたんだと思う。映画のジャックは硬派で、かつ冷徹。女性には手を出さないし、悪人は容赦せずに私刑として殺してしまう。
ところが原作のジャックは女性が大好き。今回の作品でもアイリーン・ハットンという14年前のジャックの恋人が登場する。軍隊時代の上官もあるアイリーンは、ジェームズの過去の事件が明かされないようこの街にやってきた。
そんなアイリーンに近づき、ジャックは警察に終われたときに彼女のホテルの部屋を逃亡先にするし、ちゃっかりとベッドインまでしている。といってもいやらしいイメージではなく、どこか爽やかな印象がある女好き。
映画とのちがいをあげていたらキリがないけれど、もっとも大きな部分だけチェックしてみよう。
映画は『コンビ』による事件解決だった。ジャックとヘレンというジェームズの弁護士とのコンビで事件の詳細が明らかになる。そしてジャックとキャッシュという射撃場の老経営者とのコンビで悪党をやっつける。
ところが原作は『チーム』によって事件が解決した。ここで原作だけに登場する人物がいる。ジェームズの妹であるローズマリー・バー。私立探偵のフランクリン。そしてニュース番組の女性キャスターであるアン・ヤンニ。
この3人にジャック、ヘレン、そしてキャッシュが加わったチームによって事件の真相に近づき、悪党たちを追い詰める。映画ではジャックによって殺された黒幕のザ・ゼック、そして内通していた刑事のエマーソンは、原作では生きたまま警察に逮捕されている。それはこのチームによって確実な証拠を固めたから。
どちらがいいと問われたら原作だと答える。だけどこの作品は映画もよくできている。映画ではチームを組む代わりに、ヘレンに他のメンバーの役割を持たせた。そしてジャックとの恋愛もからめている。このあたりが実にうまい。
久しぶりに映画も原作も素晴らしいと感じられる作品だった。
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