人間性が醸し出す物語感
10代でグラミー賞の7冠に輝いたビリー・アイリッシュ。今年の7月30日には待望のセカンドアルバムがリリースされた。だけどいまのところ、どことなくデヴュー当時の勢いがない。同じ年齢のオリヴィア・ロドリゴがリリースしたデヴューアルバムやシングル曲に届いていない。
ボクの印象としても、アーティストとしてはオリヴィア・ロドリゴのほうに将来性を感じるのは事実。ただビリー・アイリッシュには言葉にできない独自の雰囲気がある。彼女が抱えている心の闇のようなものが、ある種の物語感を醸し出しているような気がするから。
セカンドアルバムにはそのことを感じさせる曲が多い。特にアルバムタイトル曲である『Happier Than Ever』は名曲だと思う。例えとして古いけれど、クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』やレッド・ツェッペリンの『天国への階段』に通じる曲だと思う。
曲のオープニングは静かなバラードで始まり、そのままの雰囲気で終わりそうな気がする。だけど曲の後半から一気に雰囲気が変わる。「あなたとは関わりたくない」という歌詞を合図として、一気に激しい怒りのメッセージへと変貌する。その瞬間、この曲の物語感が爆発する。
百聞は一見に如かず。今月の3日から「Disney+ (ディズニープラス)」で独占配信されているライブがある。観客を入れずに、セカンドアルバムの曲順に演奏された映像。ボクは加入していないので全部を見ていないけれど、この曲だけがYouTubeで配信されていた。観客はアニメのアバターとなったビリー・アイリッシュだけ。よくできた映像なので、この曲の物語性を感じてもらえると思う。
そしてガラッと雰囲気は変わるけれど、主人公が醸し出す人間性によって物語感が構成された映画を観た。
2021年 映画#134
『超高速!参勤交代 リターンズ』という2016年の日本映画。2日前に前作を久しぶりに観たことで、そのまま続編を鑑賞した。キャラが完成された作品なので、安心して楽しめるコメディタッチの時代劇だった。
前作では老中の松平信祝の陰謀でたった5日で江戸へとんぼ返りした湯長谷藩の藩主である内藤 政醇と重臣たち。帰り道も予算の都合で走りながらの帰郷となった。ところが老中の逆襲に遭い、戻ったときには藩を失っていた。
ということで藩を取り戻すために戦うという内容。前作のパロディや登場人物たちのドタバタを交えつつ、最終的には藩を取り戻す。わかりやすい勧善懲悪の時代劇なんだけれど、キャラ立ちが完璧なので本当に楽しい。
特に主人公の内藤 政醇の人間性が素晴らしい。強さも弱さも隠さず、どんな相手にも自分をさらけ出す。それがたとえ宿敵の老中であっても。そんな彼の人間性によって求心力が高まり、藩主を中心とした物語が生き生きと展開していく。
この藩主を演じた佐々木蔵之介さんだからこそ、その魅力を完璧に表現できたんだと思う。彼が演じた『麒麟が来る』のときの羽柴秀吉も、親しみやすさと同時に内に秘めた恐ろしさにゾクゾクさせられた。久しぶりに観たけれど、時代劇の楽しさを思い出させてもらえる作品だった。
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