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高羽そらさんインタビュー

スタンド・バイ・ミーの街が壊滅

多作の作家で楽しいのは、過去作品の登場人物の名前を別の作品で見つけたとき。その作家の作品を通読している人だけが味わえる喜び。

 

この仕掛けで楽しませてくれるのがスティーブン・キング。彼の場合は架空の街を創造することで、その街を通じて過去と未来の登場人物が関わってくる。大きく分けて2つの街がある。ひとつはデリー。そして今回読んだ作品に使われているのがキャッスルロックという街。

 

キャッスルロックという名前を知らなくても、『スタンド・バイ・ミー』という映画を知っている人は多いと思う。ボクはこの映画が大好きで、数え切れないほど観ている。この映画に登場した少年たちが暮らしていたのは、そのキャッスルロック。いまでも映画のシーンで見た街の雰囲気を思い出せる

 

スティーブン・キングはこの街を壊滅させてしまった。なのにこの物語は彼の作品のなかでボクのベスト3に入ってしまった。それほど面白いけれど、めちゃめちゃ怖い。人間が内に秘めているダークサイドが連鎖反応を起こすことで、街を再起不能にしてしまったから。

 

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2021年 読書#87

『ニードフル・シングス』下巻 スティーブン・キング著という小説。上巻の感想については『感情のドミノ倒しが殺人を誘発』という記事に書いているので参照を。

 

とにかく長い小説。上巻は文庫本で630ページあった。ところがこの下巻は700ページ。隙間時間を見つけて必死に読んでも、読了するのに5日もかかってしまった。だけど読み始めると止まらないので、つい時間を忘れてしまう。

 

『ニードフル・シングス』というのはキャッスルロックで新しくオープンした店舗の名前、店主はリーランド・ゴーントで人間ではない。具体的な正体は明かされていないけれど、悪魔という言葉が当てはまる。

 

人間が心の奥深くに抱えている欲望、心の痛み、苦痛、後悔等を見つけ出し、それを満たせる、あるいは癒せる商品を提供する。ただしそれは幻覚でしかない。本人にとってそう見えるだけ。だけど商品を受け取った人間は商品を失うことを恐れ、ゴーントの求めることにしたがってしまう。

 

ゴーントが求めるのは他愛のないイタズラ。単体で考えれば笑い飛ばすか、少し怒られる程度のもの。ところがそれらは巧妙に仕組まれていて、やがて街中の人間の猜疑心、怒り、嫉妬等を暴発させる。上巻では女性二人の殺し合いだったけれど、下巻では街全体を巻き込んだ騒動へと発展する。

 

もっとも大きな争いは、キリスト教のカソリックとプロテスタントの戦い。ここだけで何十人という人間が死んでいる。ゴーントは復讐を求める人間に銃を用意して次々に与える。だから普通の主婦が隣人を撃ち殺す。とにかく収拾がつかない。

 

唯一まともだったのは保安官のアラン。アランの恋人であるポリーでさえゴーントの幻覚と催眠術に囚われてしまう。最終的には大量に用意されたダイナマイトによって、『スタンド・バイ・ミー』の舞台だったキャッスルロックの街は壊滅する。生き残ったのは数えるほど。州警察や報道陣にまで死者が出た。

 

最終的にゴーントを街から追い出したのはアラン。協力したのは幻覚から覚めたポリーと副保安官のノリス。偽物の商品で騙すゴーントに対し、手品が得意なアランが同じく偽物によってゴーントを追い詰めたシーンは最高だった。

 

この小説でゴーントに協力したのはエース・メリルという刑務所帰りの男。『スタンド・バイ・ミー』が好きな人なら、主人公のゴーディたちをいじめていた不良少年のリーダーなのを覚えているだろう。そんなエースもこの物語では中年になっている。

 

もちろんゴーディの名前も物語に登場した。すでに有名な作家となって他の街で暮らしているとう設定。もしキャッスルロックにいたら、彼も殺されていたかもしれないね。著者はエースというキャラが好きで、他の作品でも悪役として使っている。この作品で殺されたけれど。

 

ボクがまだ読んでいない作品で、このキャッスルロックは使われているらしい。その作品に出会えるのが楽しみ。だけど街の最後を知っているだけに、複雑な気持ちで読むことになりそう。

  

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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