物語の後半はジェットコースター
『ジャック・リーチャー』シリーズの作者であるリー・チャイルドは、物語の流れを後半で一気に変えてしまう傾向が強い。前半までの流れが想定外の方向に進み、驚きながらもそのまま引っ張られてしまう。
特に今回読んだ作品はその変化が強烈だった。文庫本の上下巻に分かれている。ただし上巻はジェットコースターが動き出して、ゆっくりと上昇しながら最高地点に向かう段階で終わっていた。つまり下巻はいきなり車両が落下して猛スピードで駆け抜けるという展開だった。
2021年 読書#98
『最重要容疑者』下巻 リー・チャイルド著という小説。上巻の感想については『過去最高の巻き込まれ』という記事に書いているので参照を。
ヒッチハイクしたものの、その車に乗っていた男性二人は殺人犯で、女性は人質だったというジャック。どうにか脱出したけれど、カレンという人質の女性を救うことができなかった。カレンはセクシーバーで働く女性で、幼い娘と二人暮らしだった。
ジャックはジュリアというFBI捜査官と協力することで、カレンを救おうとする。ここまでが上巻。下巻は悲惨な出来事からスタートする。ジャックがヒッチハイクした車が炎上した状態で見つかる。車中には遺体があった。カレンを助けられなかったジャックとジュリアは、失意のまま逃げた二人の行方を追う。
逃げたのはマックイーンとキングという男。二人はFBIが追っているテロ組織のメンバーで、組織に関与してきたCIAの工作員を刺殺したらしい。ここまでは普通の物語。だけどリー・チャイルドは想定のはるか斜め上から物語を展開させる。
結論からいえば、マックイーンは潜入していたFBI捜査官だった。さらに人質だったカレンも実はFBIの優秀な捜査官。ジャックがヒッチハイクした車に乗っていた本物のテロリストはキングだけだった。つまり焼死したのはカレンではなくキングだった。
カレンは生きていた。ただし潜入していたマックイーンは、組織に戻ってキングの死を報告しなければいけない。結果として潜入がバレて人質となってしまった。そこでマックイーンを救うため、ジャックとジュリアに合流したカレンの案内でテロ組織の隠れ家へ向かう。
だけどその途中でジュリアは射殺される。カレンはFB Iの助けを待つことを主張。だけどマックイーンの命を心配したジャックは、いつものように単身で敵のアジトに乗り込んでいく。ここからはジャックの真骨頂。たった一人で、次々とテロリストを倒していく。
そしてマックイーンを助け出して逃亡途中、追い詰められて死を覚悟する。当然ながらそこに登場するのはカレン。最終的には3人でテロリストの陰謀を暴き、アジトを壊滅させたという結末になった。上巻はちょっと訳ありの殺人事件という雰囲気だったけれど、下巻になって一気に世界観が変化していった。
ラストシーンはジャックが車から降りて、マックイーンとカレンと別れる。そして彼が向かったのはヴァージニア州。そこにはジャックの後輩であるスーザン・ターナー少佐が待っている。映画のジャックは硬派だけれど、原作のジャックはそうでもない。だから彼はスーザンに本気で会いたいと思っている。
ということでこのシリーズ2本目の映画化作品となった『ネバー・ゴー・バック』へとつながる。先に映画を観ているので、原作とのちがいを楽しみにしている。
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