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高羽そらさんインタビュー

金の切れ目が縁(討入)の切れ目

今日から12月。オミクロン株の出現でマスコミは鬼の首を取ったように騒いでいるけれど、日本では感染者が落ち着いてきたことで、経済の正常化が期待されている。そしてこの2年近く中止となっていたイベント等も、様子を見ながら少しずつ再開されている。

 

12月といえば、頭に浮かぶのは14日の赤穂義士祭。いやいつもは浮かばないんだけれど、先日に忠臣蔵関係の映画を観たのでつい思い出しただけwww   今年は規模を縮小しながらも祭りを再開するとのこと。

 

その映画というのは『決算!忠臣蔵』という2019年のコメディ映画。堤真一さんが大石内蔵助を演じておられて、思い切り爆笑させてもらえる楽しい作品だった。その映画の元になった本を読んだ。

 

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2021年 読書#120

『「忠臣蔵」の決算者』山本博文 著という書籍。赤穂浪士の討入に関しては、証拠となる資料が大量に残されているらしい。それゆえ各義士の動きが詳細にわかっている。ところがそんな忠臣蔵の研究において、これまで経済の観点から切り込んだ書籍がなかった。それで著者がこの本を書くことになったそう。

 

大石内蔵助は、『預置候金銀請払帳』(あずかりおきそうろうきんぎんうけはらいちょう)という書物を残している。これは歴史家によく知られている史料なのに、これまでこの書類を中心とした考察が行われていなかった。

 

これは赤穂藩が改易となってから、討ち入りが行われる前日までの資金の出入りを記録したもの。いわゆる決算書といっていい。全額で700両ほどで、現在の金銭にすれば約8000万円になる。このうち300両は、主君である浅野内匠頭の正室が嫁いだときの化粧料、いわゆる持参金を使っている。

 

それゆえ主君の未亡人に報告する必要があり、討ち入り日である元禄15年12月14日当日に大石内蔵助はこの書類を届けている。この本を読めばわかるけれど、かなり詳細に記録されている。江戸時代の文化を知る上でも貴重な史料だと思う。

 

この金銭の動きを見ているだけで、大石内蔵助の心のうちが見えてくる。資金源は化粧料の300両と、赤穂城の明け渡しによる物品の処分等で手元に残った400両を合計したもの。まずは主君の弔いのために、そこから127両ほどを使っている、

 

そして主君の弟である浅野大学によるお家復興を願い、そのために資金を投じている。大石内蔵助としては当初は討ち入りの意思がなかったということ。ところがお家復興の見込みは消え、喧嘩両成敗のはずの吉良上野介はお咎めなし。ということで残りの資金を討ち入りのために使った。

 

赤穂城の明け渡しと同時に、藩士は武家屋敷を追い出される。江戸屋敷も没収されるので、誰もが住む場所から探さなくてはいけない。それゆえ資金の19%に当たる132両ほどが藩士たちの生活補助費に使われている。これについては悲惨な話がいくつもあり、妻や母親に餓死の覚悟を迫る藩士の手紙も残されていた。

 

だから決して映画のように笑えない。そんな状況なので、特に江戸に残った藩士たちは暴発する可能性があった。それでは敵討ちが失敗に終わってしまう。だから頻繁に関西と江戸で連絡を取ったり、行き来が必要となった。それゆえ費用の35%になる248両ほどが旅費・江戸逗留費に使用された。

 

最終的に47人となったのは、映画にもあったように江戸へ連れて行ける人数が資金的に限定されたから。さらに討ち入りが決まったとたん、逃げ出した元藩士も多かった。討ち入りが先になるほど資金が枯渇する。生活していけない藩士が続出する。

 

つまり金の切れ目が縁の切れ目となった事例も多いそう。不思議なことに47人のうち重職はほとんどいない。そこそこ裕福な人間は、主君の仇討などより保身を選んだということだろう。そんな裏の事情も垣間見れて、とても興味深い書籍だった

 

以前は赤穂義士があまり好きじゃなかった。だけどこの本を読んで、彼らの真意の一端を感じられたような気がする。それは当時の幕府も同じで、切腹を許されたのは仇討ちとして認めたからだろう。さらに吉良上野介の息子に対しても、討ち入り後に幕府は厳しい処分を下している。

 

それだけでも討ち入りをした彼らは救われたことだろうと思う。武士の一分、という言葉を、少しは理解できたような気がした。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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