自業自得な被害者たち
犯罪者を主人公にした小説や映画の場合、どうしても犯罪者に感情移入してしまう。罪だとわかっていても、つい応援したくなってしまう。わかりやすい映画で言えば『オーシャンズ11』のような作品がそう。
でもあれはフィクション。もし実話だとしたらどうだろう? 果たして主人公に感情移入できるだろうか?
2022年 映画#14
『ハスラーズ』(原題:Hustlers)という2019年のアメリカ映画。実話を映画化した作品とのこと。主演はコンスタンス・ウーというアジア系の女優さんなんだけれど、共演しているジェニファー・ロペスの演技が素晴らしすぎて、完全に主役を食っていた。この演技ならアカデミー助演女優賞を受賞しても不思議じゃないと感じた。
主人公はストリッパーの女性たち。コンスタンス・ウー演じるデスティニーは、ストリッパーとして働いているが、いまいち稼げない。そんなとき、同じ店のストリッパーのダンスに魅了される。ジェニファー・ロペス演じるラモーナという女性。彼女がステージに立つだけで、札束が飛び交う。
時代はまだ2000年代の初めで、アメリカは好景気に沸いていた。デスティニーはラモーナに目をかけられ、ダンスや客の取り入り方法を教えてもらう。それだけでなく二人でコンビを組むことで、高株価で儲けたウォール街のサラリーマンたちから豪勢な暮らしができるチップを獲得していた。
ちなみにジェニファー・ロペスのポールダンスがマジですごい。プロのポールダンサーについて特訓したことで、スタントなしで全て撮影したとのこと。そして彼女の色気に悩殺される。この映画の公開時は50歳だったなんて信じれない。
ところが2008年にやってくるのがリーマンショック。このときにデスティニーはクラブを退職していたけれど、夫と離婚してシングルマザーとなっていた。このままでは生活していけない。それでもう一度クラブに戻ったけれど、過去の賑わいは夢のように消えていた。
困り果てたデスティニーは、偶然にラモーナと再会する。彼女も不遇時代が続いていたけれど、最近になって一気に羽振りが良くなっていた。バブル時代は顧客を酒に酔わして、ベロベロとなった段階でクレジットカードにサインさせていた。これはまぁ合法的。
だけどリーマンショックで稼げなくなったことで、ラモーナは一線を超えてしまった。ターゲットの客の酒に調整した薬物を混ぜることで、意識混濁状態にしてしまう。そしてクレジットカードの使用にサインをさせていた。
最初デスティニーはその誘いを断る。だけど幼い娘を失いたくない。そこで二人が数年ぶりにタッグを組んだ。それが大成功。被害者はしまったと思うものの、絶対に警察に行かない。なぜなら下心があって、スケベ心を見透かされているから。それゆえ黙っている。それどころか、常連となるような顧客もいた。
あまりの繁盛で最初に組んだ4人では手が回らない。そこで新たなメンバーを集めたのが失敗の始まりだった。その中には過去に犯罪歴のある女性やジャンキーがいた。デスティニーは反対するけれど、その不安は的中する。ある女性が警察に捕まると、あっさりと罪を告白してしまった。それでデスティニーたちも逮捕されてしまう。
最終的には司法取引に応じることでデスティニーもラモーナも刑務所行きを免れる。そんな彼女たちの経験を記事にしたいとインタビューが入り、映画としてはインタビューに応じるデスティニーの語りということで構成されている。
麻薬を使うのは明らかにマズい。立派な犯罪だし、彼女たちが逮捕されたのは当然。けれども被害者たちにも自業自得な部分がある。女性たちを性の道具として軽んじている。そんな思い上がった女性差別の意識が、彼らの被害の元凶でもあるから。そのせいもあって、やはり主人公たちを応援してしまった。
ジェニファー・ロペスの素晴らしい演技を見られる秀作だと思う。そして歌手でもある彼女らしく、共演陣も楽しかった。女性ラッパーのカーディ・Bとリゾがストリッパー役で登場。歌手のアッシャーなんか、ストリップを見に来た本人役で登場していた。
さらにインタビューをしている記者役でジュリア・スタイルズも出演していた。久しぶりに彼女の演技を見られて、何かとお得感の多い素敵な映画だった。
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