カミングアウト後の爽快感
久しぶりに素晴らしい脚本の映画を観た。ロマンティック・コメディの作品なんだけれど、前半から終盤近くまで、破裂しそうな緊張の圧が増していくばかりで胸が苦しくなる。だからこそラスト近くでその緊張感が破裂したとき、言葉にできない爽快感を覚える作品だった。
その緊張感の原因は『人に言えない秘密』だった。
2022年 映画#92
『ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト』(原題: Happiest Season)という2020年のアメリカ映画。邦題がイマイチでやめようかと思ったが、大好きなクリステン・スチュワートが主演ということで観た作品。だけどもし見過ごしたら後悔していたと思う素晴らしい物語だった
クリステン・スチュワート演じるアビーは同性愛者で、ハーパーという女性と暮らしていた。アビーの両親はずっと前のクリスマス近くに他界していて、彼女はクリスマスが嫌いだった。だけど実家に戻るハーパーに誘われてクリスマスを一緒に過ごすことにした。
ところが実家に到着する途中でハーパーが告白する。両親に二人のことを話したと言ったのは嘘で、父親が市会議員に立候補する寸前だったので言えなかったとのこと。さらに市長選に立候補する予定。クリスマスが終わったら絶対にカミングアウトするので、クリスマスのあいだはルームメイトということにしてくれと頼む。
もちろんすんなり行かないのが映画。両親や友人にゲイだと悟られたくないハーパーは、アビーに対して次第によそよそしい態度になってくる。両親はかつてハーパーが交際したことある元カレに声をかけていた。仲良くしている二人を見たアビーは嘘をついていることに疲れてくる。
さらにアビーが知り合ったのは、ハーパーが高校生時代に恋人だったライリーという女性。二人の関係を同級生にバラされたとき、両親にゲイだと知られるのを恐れたハーパーは、ゲイのライリーが勝手に迫ってきたと嘘をついた。つまり事実を認めない前科があったということ。
ということで自分よりも両親を優先するハーパーに対して、アビーは別れを告げる。結婚するつもり婚約指輪まで用意していたというのに。だけどラスト近くになってハーパーの姉も「人に言えない秘密』を持っていたことがわかる。夫婦円満を装っていたけれど、すでに離婚寸前だった。
ここからドタバタ騒ぎが起きて、ついにハーパーがゲイだということが大勢の人の前で明かされてしまう。アビーを失いたくないハーパーは、意を決してカミングアウトする。だけどアビーはその段階になるまで覚悟しなかったハーパーを許せず、彼女の元を去ろうとした。
だけど結末はハッピーエンド。ハーパーや姉でだけでなく、ハーパーの母でさえ『人に言えない秘密』を抱えていた。家族ゴッコをすることで家族の平和を守り、誰もが本当の自分を押さえつけていた。そんな想いが爆発した結果、誰もが本当の自分に戻ったのが先ほどの素敵な写真。
耐えきれない緊張感が、乱暴だけれど心地よく解放されていく。そして感動の涙がポロポロとこぼれてきた。素敵な映画だったなぁ。6月に観るなんて思い切り季節外れだけれど、クリスマスが近づいたらもう一度観てみよう。
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