壮大過ぎる結末に唖然
10作品も費やして到達した結末が、あまりに壮大過ぎて言葉を失っている。読了した昨晩には軽いショック状態になった。
といっても望ましい結末であり、ボクが希求している世界観とも一致している。だけどまさかこんな展開になるとは思わなかった。
2022年 読書#93
『ファウンデーションと地球』下巻 アイザック・アシモフ著という小説。上巻の感想は『銀河人類の起源である地球』という記事に書いているので参照を。
関連書籍を含めて10作品となる『ファウンデーション』シリーズ。ついにアシモフ自身が執筆したシリーズ作が完結した。銀河系の未来をワンネス意識であるガイアに託したトレヴィズ。それが前作の『ファウンデーションの彼方へ』という作品のラストだった。
それによってハリ・セルダンが500年前に計画したファウンデーション計画が、結果として中断したことになる。二つのファウンデーションが争ったことで、銀河系の選択権を委任されたトレヴィズは、ガイアによる銀河の未来を選んだ。だけど直感で決めたことなので確信が欲しい。
その答えは人類の起源だと言われる地球にある。そう直感した彼は、前作で相棒だったペラロットとガイア人の代表であるプリスと旅を続ける。上巻では地球がある場所のヒントを見つけるが、どうしてもわからない。
地球人類が他の惑星に移住した直後の惑星は見つかった。ところがどの惑星も荒廃していて、3人には危機ばかりが訪れる。そして下巻の最初では超絶的な能力を持つソラリア人の惑星から命からがら脱出した。そのときプリスが、殺されそうになったソラリア人のファロムという子供を連れてきてしまう。
ファロムは子供だけれど、徐々に恐ろしいほどの能力を見せるようになってきた。トレヴィズは不安を覚えながらも、自分の確信を得るために地球を必死に探す。そしてようやく見つけた地球は、放射能に覆われた死の惑星となっていた。
だけどトレヴィズの直感力は衰えていない。やがて地球に隠されていた秘密が月にあることに気づく。そして月に到着すると、そこにはある存在が待ち受けていた。それはダニール・オリヴァーという人間型のロボットだった。
ボクはこの段階でビックリ! オリヴァーというロボットは、『鋼鉄都市』というアシモフのロボットシリーズに登場したキャラ。アシモフにとって両輪であるロボットシリーズとファウンデーションシリーズが、この作品で融合することになった。
このシリーズをすべて読んだ人は、マジでこの結末に驚いているはず。オリヴァーはなんと2万年も生き続けていた。ハリ・セルダンにファウンデーションの構想を作らせたり、ガイアというワンネス意識を有する惑星を作り出したのもオリヴァーだった。つまりハリ・セルダンは利用されていただけ。
オリヴァーの目的は銀河に属するすべての人類、動物、植物、鉱物等をひとつの意識に統合して、有機的な存在とすることだった。そうすることで人類は争いをやめ、平和に暮らすことができる。さらに他の銀河からの侵略に対しても、全銀河が一丸となって対抗することが可能となるから。
ただ2万年も生きたオリヴァーにもついに寿命が来た。そこで膨大なオリヴァーの記憶と能力を移植する特殊な脳が必要となった。さらにロボットではなく人間に意識を移譲することで、オリヴァーはロボットとしての義務からも解放される。
アシモフが提唱した『ロボット3原則』という有名なものがある。ロボットである限り、この原則から逃れられない。だけど全銀河をたった一つの意識にするのはまだ時間がかかる。そこでファロムという超絶的な脳力をもつ子供が必要となった。
つまりトレヴィズの旅は、オリヴァーによって誘導されたものだった。自分の決断に納得したトレヴィズは、オリヴァーにファロムを託す。そしてこれから何世紀もかけて、全銀河はワンネス意識となっていくというエンディングだった。
いやいや、マジですごい物語だった。求める先がワンネス意識だという結論が、ボクにとってど真ん中のストライク。この宇宙はたったひとつの意識で始まり、個人として分離することで様々な経験を積み、やがてひとつに戻っていくというのがボクの宇宙観。だからこの物語には全面的に感情移入してしまった。
さて、他の作家が書いた『ファウンデーション』シリーズのスピンオフが3作品ある。次はそれらの作品に挑戦しようと思っている。アシモフの世界観が、どのように解釈されて物語化されているのか楽しみにしている、
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