100年前の心理描写にグッタリ
映画を観たことで、その物語の原作を読むことが多い。気に入った作品をより深く知りたいから。ところがある映画の原作を読もうとして、とんでもない深い世界にはまり込んでしまい、抜け出すのに四苦八苦したwww
2022年 読書#107
『ヘンリー・ジェイムズ作品集2 ポイントンの蒐集品・メイジーの知ったこと・檻の中』ヘンリー・ジェイムズ著という小説。
この書籍を原作とする映画は『メイジーの瞳』という2012年のアメリカ映画。タイトルからわかるように原作は『メイジーの知ったこと』という作品。神戸の図書館で調べると、この作品集しか見つからない。ところがとんでもない分厚い本。
単行本として750ページもあって、合計で3つの作品が収録されていた。せっかくなので他の作品も読もうと思って手をつけた。なんせ100年以上も前の19世紀の作品。著者のヘンリーが亡くなったのは1916年だからね。
いまいちなら適当にして、映画の原作だけでも読もうと思った。ところがなかなか面白い。それですべての作品を読むことになって、ほぼ10日以上もこの本を夜になると抱えていた。広辞苑のように重くて、余裕で漬物石になるほど。
ただはっきり言って疲れた。著者は心理主義小説と呼ばれるジャンルの作家らしく、物語全体を支配しているのが心理描写。最初のうちは興味深く読んでいたけれど、これが延々と続く。物語自体はさほど進行していないのに、登場人物の心理がひたすら語られていく。それも明確な心理ではなく、登場人物同士が探りを入れあっている微妙な状況。その日の疲れ具合によっては眠気との戦いになった。
3つの作品はそれぞれユニークな設定で、なかなか面白い物語だった。それぞれに内容を簡単に書こうかと思ったけれど、興味のない人がほとんどだから、映画化作品についてだけ触れておこう。
『メイジーの瞳』という映画は、この原作を現代の世界にアレンジしてある。メイジーという少女が主人公で、両親の離婚によって父と母の家を行ったり来たりというアメリカでよくあるパターン。その両親も自分のことで忙しい。
母の家に行くと相手をしてくれるのは再婚相手の男性。父の家で相手をしてくれるのはベビーシッターの女性。母も父もメイジーのことを愛している。だけど自分の生活に精一杯で、子供を他人に任せていた。最終的にどうなるかというと。
母の再婚相手と父の雇ったベビーシッターが恋に落ちる。そして二人は自分たちの娘としてメイジーと暮らしたいと願う。それはメイジーの想いでもあった。ジュリアン・ムーア演じる母がメイジーを迎えにきたとき、娘の固い意志を知って若い二人に託すというエンディングだった。
メイジーは気の毒だけれど、両親は彼女に対して愛情がある。そして若い二人もメイジーを本当の娘のように思っている。だからハッピーエンドの物語として観ることができた。だけど100年以上前の原作は違った。
メイジーの両親はそれぞれ再婚する。その両親は最終的に娘の世話を放棄してしまう。メイジーに対する愛情が存在していない。メイジーの面倒を見ようとしたのは母の再婚相手と父の再婚相手。原作では両親の再婚相手同士が恋に落ちて、メイジーを二人の家族として育てようとする。
だけどこの二人もかなり自分勝手。いずれ両親のようにメイジーを見捨ててしまう可能性があった。最終的にメイジーを連れ出したのは、母が雇った家政婦だったという終わり。ハッピーエンドにはほど遠く、愛に飢えた気の毒なメイジーのままで終わってしまった。
だから余計に疲れたのかも。自分の子供を愛せない大人の姿を見ると、切なくてたまらなくなる。どうしてもボクの子供時代の体験と重ねてしまうから。とにかく100年前の世界から抜け出して、普通の読書に戻ろうと思う。
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