悪魔でさえ容認する母性愛
敬愛するスティーブン・キングが、彼のエッセイで読むべきホラー作品をいくつかあげていた。そのいくつかをメモしていて、少しずつ読んでいる。
今回チョイスしたのは、ボクが小学校に入ったころに映画化された作品。でも映画は観ていないので、先入観なく小説を読むことができた。さすがスティーブン・キングが推薦するだけあって、ホラーの必須要素が網羅された素晴らしい作品だった。
おそらくこの作品をヒントにしている映画や 著作はかなり多いのでは? そして同時にこの作品に影響を及ぼしている著作もわかったような気がする。
2023年 映画#54
『ローズマリーの赤ちゃん』アイラ・レヴィン著という小説。映画公開は1968年と古いけれど、有名な作品なので知っている人は多いだろうと思う。タイトルでストーリーが想像できる。思ったとおり、悪魔の子供を宿すという物語だった。
ローズマリーは夫のガイと結婚して2年。そろそろ子供が欲しいと思っていたが、部屋が狭いので引越しを考えていた。希望するニューヨークのアパートはあったけれど、なかなか空きが出ない。それで別の物件を決めたとたん、そのマンションに空きが出た。
ローズマリーはニューヨークに出てきてからの親代わりであるハッチに相談する。ハッチは最初に決めたマンションに住むよう勧める。なぜなら、ローズマリー夫婦が希望していたマンションは過去に異常な事件が続出していて、現在でも自殺者や変死が起きているから。
それでもローズマリーたちは希望のマンションに引っ越す。隣人のカスタベット老夫婦はお節介な人たちで、やたらローズマリーに関わろうとする。最初は夫のガイも嫌がってたが、やがてガイも老夫婦の家に出入りするようになる。ここまでの段階でかなり気持ち悪い展開になっていく。
結論から述べると、隣人の老夫婦は悪魔教の信仰者。そしてそのマンションの住人も同じ。夫のガイは売れない俳優だったけれど、老夫婦に関わることで運がむいてくる。ライバルが失明したり、不思議な出来事が起きて仕事が増える。それはガイがあることに同意して、悪魔に魂を売り渡していたから。
ローズマリーが悪魔の子供を宿す女性として選ばれたのが理由。老夫婦から親切に見せかけて怪しい薬物を飲まされるようになり、ローズマリーはやがて意識を失う。その後に悪魔との性交シーンが克明に描写されるが、想像するだけで背筋が寒くなる。そしてローズマリーは妊娠する。
もちろん彼女はガイとの子供だと信じている。隣人の老婦婦が紹介したニューヨークで超有名な産婦人科の医師もグル。夫や隣人、そして医師までもが悪魔教の信者なら逃げることはできない。警告していたハッチは殺されてしまう。逃げ場がなくなったローズマリーは悪魔と人間の混血児を出産した。
でもここから驚く展開になる。事実を知ったローズマリーは、悪魔の子供を受け入れてしまう。子供が愛しいあまり、悪魔の子であっても育てようと決意する。自分が愛を持って育てたら、必ず真っ当な人間になると盲信している。頭に角があり、手は鉤爪の赤ちゃんなのに。
悪魔でさえ受け入れてしまうローズマリーの母性愛に驚いた。その後にどうなるかわからないが、映画では続編が作られているらしい。このホラーを読んで思い浮かべたのは新約聖書。このローズマリーの物語は、イエス・キリスト誕生の対局として描かれたんだと思う。
イエスの母である母のマリアは、処女懐胎している。だからイエスは夫のヨセフの子供ではない。
ローズマリーは処女ではないけれど、妊娠させたのは悪魔。だから赤ちゃんは夫のガイの子供ではない。
ローズマリーの赤ちゃんは、神の世界から人類を奪い返す悪魔の救世主としての存在なのだろう。それゆえこの物語は、キリスト教社会ではより深い恐怖をもたらす作品だと思う。ホラーの見本として、語り継ぐべき作品だと感じた。
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