横井裕之｜よこいひろゆき(フードアナリスト協会創業者)オフィシャルブログ

4月２４日。水曜日。

今日の東京地方は晴れ。

過ごしやすい季節になってきました。

２４節気では春の最後の節気である「穀雨」の頃。

恵みの雨が降り、米や穀物が芽吹き育つ頃。

生命の逞しさを感じる事ができる季節ですね。

来週の土曜日５月６日にはいよいよ「立夏」となります。

立夏 (りっか) 5/6頃

夏の立つがゆへ也（暦便覧）

この日から立秋の前日までが夏。

野山に新緑に彩られ、夏の気配が感じられるようになる。

かえるが鳴き始め、竹の子が生えてくる頃。（暦のページ）

立夏の頃になると、子供の頃に過ごした鳥取の初夏を思い出します。

「目を閉じて米子の春を別れゆく」

この句は、３５年過ごした米子を離れ、滋賀県草津市に居を移す時に

亡くなった父が詠んだ俳句です。

父は母に出会って

京都大学の将来を嘱望された助教授職を捨てて

田舎の鳥取県米子にやって来て

しがない国立大学の教授として定年を迎えました。

幼い頃、父は私に

「世界に名を残す研究者」

「人に、人類に役に立つ研究者」

になりたい、と言っていましたが、

田舎で設備の予算もない大学では学者として立つことは望むべくもなく

研究の内容もローカルで小規模なものとなりました。

宇宙物理の研究者の父は、地球物理へと転向し、

レーザービームの研究者として鳥取で過ごしました。

鳥取県米子市にある中海の端から端の海上1メートルをレーザービームを飛ばし、

海上から立ち上る海塩粒子が、レーザービームの方向に及ぼす影響を数値化する、

という一般社会から見れば何の役にも立たない研究に一生を費やして亡くなりました。

京都大学で博士号を取ったりベルギーやアメリカの学会で話題になったりはしましたが、

父の研究は世界的には平凡な内容だったんだと思います。

毎年、この季節になると父が米子を引き払って滋賀県に引っ越しするときに詠んだ

「目を閉じて米子の春を別れゆく」

に思いを寄せます。

「風薫る５月の風われに吹く」

という句も同時期の父の句です。

風、という語句が２回使われているので良い俳句とは言えませんが、

当時の父の気分が感じられて好きな句です。

父は、鳥取の大学の職を定年で辞した後、

神戸女子大学という神戸の大学の教授となり

病気で倒れるまで奉職しました。

多くのしがらみや苦しさから解放され一番楽しそうだったのが

神戸の女子大で働いている時期で、

息子としても一番穏やかに父と接する事ができた幸せな時間でした。

父は「世界に名を残す」研究をすることができませんでしたが、

NASAやペンタゴンから研究について問い合わせがよく来ていると自慢していましたので

「人に、人類に」少しは役に立った研究もあったのでは、と息子としては喜んでいます。

そして何よりも父は研究が３度の食事より好きでした。

まがりなりにも田舎の鳥取で物理学の勉強を続けることができて父も幸せだったんだろうなあ、

と私もこの年になってやっとわかる様になってきたような気がします。

風薫る若葉燃えるこの季節。

東京では蛙の合唱は聞こえませんが、

ゴールデンウィークには車を飛ばして蛙の声を聴きに静岡か埼玉あたりに行ってみたい、

と思うこの頃です。

皆様も素敵なゴールデンウィークをお過ごしください。