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1セットか多セットか

エクササイズの最適ボリュームについては昔から議論が繰り広げられている。ウェイトトレーニングが広まり、アーノルドが活躍したころまでは、数多くのセット数をこなすトレーニングが一般的に行われていた。
しかし鬼才アーサー・ジョーンズが登場し、「1セットで十分だ」と主張した。ただしどんなエクササイズでも1セットで良いというわけではなく、彼の開発したノーチラスマシンを使うことによってこそ、1セットで最大の効果を得ることができるということであった。
ジョー・ウィダーはそれに反発し、彼の主催するボディビル雑誌でネガティブ・キャンペーンを繰り広げる。そしてアーサー・ジョーンズはウィダーの手の及ばない雑誌(アイアンマンなど)で、それに対する反論をする。
そしてマイク・メンツァーが登場した。アーサー・ジョーンズを信奉していた彼は少セットでトレーニングを行い、アーノルドにも勝ろうかという身体を作り上げる。後年、既に少セットでトレーニングしていたドリアン・イェーツを指導し、「今までバイセップスのトレーニングは2セットやっていたが、1セットで十分なのだ!」と言わしめた。
しかしその後、多セット派がボディビル界の多数を占めるようになる。現在のプロビルダーの殆どは多セットでトレーニングしているようだ。

ボディビル界ではなく、学術的な世界ではどうか。メンツァーらの主張を裏付ける研究結果として良く引き合いに出されるのが、Carpinelliらの研究である。(※1)この研究では1セットと多セットとで、筋力も筋肥大も効果に違いはないと結論づけている。

それに対して、Kriegerらは2~3セット行うほうが1セットに比べ、筋力向上効果が46%高くなるという結果を14の論文から導き出した。(※2)
さらには2~3セット、さらには4~6セットのほうが1セットよりも筋肥大における効果が高いというメタ・アナリシスを発表した。(※3)

このメタ・アナリシスに対してCarpinelliは「選んだ論文の質が悪い。もっともクォリティの高いとしている論文でもサンプルサイズが少なく、各セットは限界まで行っておらず、コントロールグループがなく、12週間で筋力の向上がたったの3~5%だったり、フォーストレップスを行ったり行わなかったりなどで、メタ・アナリシスとはいっても信頼できない」と主張している。(※4)

トレーニング頻度、回復力、筋肉量、ホルモンレベル、トレーニング経験、選択エクササイズなどなど、効果に影響するファクターは非常に多く、この問題に簡単に決着がつくことはないだろう。
しかし、もし今のトレーニングで効果が出ていないと感じるのならば、まずはセット数を減らすことからはじめてみて欲しい。5セットやっていたら、思い切って3セットにしてみる。意外な効果が訪れるかもしれない。

※1:
Strength training. Single versus multiple sets.
Sports Med. 1998 Aug;26(2):73-84.

※2:
Single versus multiple sets of resistance exercise: a meta-regression.
J Strength Cond Res. 2009 Sep;23(6):1890-901. doi: 10.1519/JSC.0b013e3181b370be.

※3:
Single vs. multiple sets of resistance exercise for muscle hypertrophy: a meta-analysis.
J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1150-9. doi: 10.1519/JSC.0b013e3181d4d436.

※4:
CRITICAL REVIEW OF A META-ANALYSIS FOR THE EFFECT OF SINGLE AND MULTIPLE SETS OF RESISTANCE TRAINING ON STRENGTH GAINS
Med Sport 16 (3): 122-130, 2012DOI: 10.5604/17342260.1011393

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山本義徳|やまもとよしのり(ボディビルダー)プロフィール

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山本義徳(やまもとよしのり)
生年月日:1969年3月25日
血液型:A型
出身地:静岡県

【経歴】
1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
◆著書
・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
・サプリメント百科事典(辰巳出版)
・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
など30冊以上

◆指導実績
・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

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