エクササイズのテンポとTUT

どれくらいの重量で何レップス行い、何セットやるか。これらは良く議論されており、多くのトレーニーは自分なりの方法論を持っているだろう。しかし盲点となっているのが「テンポ」である。

 

何秒かけて挙げ、何秒かけて下ろすか。ネガティブをゆっくりというのは知られているが、ポジティブはどれくらいの速度でやるのか。反動を使うのか、使わずに爆発的に挙げるのか、それともゆっくりと挙げていくのか。

 

古くから知られているのが、Time Under Tension (TUT)という概念である。これは筋肉が緊張している時間という意味で、例えば1レップに3秒かけたら、10レップ行った場合のTUTは30秒ということになる。

筋力向上なら4秒~20秒、筋肥大のためには40秒~60秒などと言われているが、その真偽はどうなのだろうか。スロートレーニングで1レップ20秒かけて3レップスやった場合も、爆発的な速度で1レップ1秒で60レップスやった場合もTUTは60秒となるが、両者は同じように考えて良いのだろうか。

 

基本的には爆発的に挙上することで、多くのモーターユニットが動員されるため、筋への刺激は強くなる。筋電図の測定でも、早い速度で動かしたほうが振幅が大きくなることは示されている。

6レップス可能な重量でベンチプレスを「ゆっくり」と「普通」、「爆発的」な速度で限界まで行ったところ、爆発的に動かした場合、明らかに筋活動が大きくなっている。またSSCとしての効果もあってレップス数は増えるが、TUTとしてはゆっくり動かした場合に比べて短くなる。

「ゆっくり」のTUTは平均24秒、「普通」のTUTは平均26秒、「爆発的」のTUTは平均20秒だった。

なお面白いのは、「ゆっくり」やる場合と「普通の速度で」やる場合とでは、筋電図に違いがなかったことだ。スピーディにやった場合のみ、筋活動が大きくなっている。(※1)

 

なお爆発的挙上を継続していると、中枢神経系の疲労や神経伝達物質が枯渇し、セット後半において筋電図の振幅は弱くなってくる。ただしレップスを多く行えることにより、パンプは増すようだ。(※2)

 

また爆発的挙上の場合、使用重量は軽めでも効果がある。ジャンプスクワットにおいて30%1RMで行った場合と80%1RMで行った場合を比較したところ、8週間後のミオシン重鎖とタイチンに差がなかったという報告もある。(※3)

 

ただし爆発的挙上の場合、ケガをする危険性が増す可能性がありそうだ。しかし高齢女性(60~65歳、あるいは80~89歳)を対象に行った研究では、12週間に渡って高重量での爆発的挙上タイプのエクササイズを行ったところ、安全に筋力を増加させることができている。(※4)

 

筋活動を強くするのは爆発的挙上だが、では筋肥大への効果はどうか。日本で行われた研究では、スローにやってもスピーディにやっても大差はないという結果が出ている。(※5)
なお極端に長いTUTでも、筋タンパク合成は高まることが分かっており、30%1RMでポジティブ6秒、ネガティブ6秒で12レップス→7レップス→6レップスの3セットやった場合、タンパク合成が175%となった。(※6)

 

またポジティブとネガティブではネガティブをゆっくり行うのが良いとされているが、実は相反する研究もある。(※7)
現時点で結論を出すことは難しいが、筋力やパワーのためなら爆発的挙上だということだけは言えそうだ。

 

 

※1:
The effect of lifting speed on factors related to resistance training: A study on muscle activity, amount of repetitions performed, and time under tension during bench press in young males.
Mårtensson, Gustav. (2015).

 

※2:
Muscle activations under varying lifting speeds and intensities during bench press.
European journal of applied physiology 112.3 (2012): 1015-1025.

 

※3:
Effect of explosive resistance training on titin and myosin heavy chain isoforms in trained subjects.
The Journal of Strength & Conditioning Research 17.4 (2003): 645-651.

 

※4:
Explosive heavy‐resistance training in old and very old adults: changes in rapid muscle force, strength and power.
Scandinavian journal of medicine & science in sports 18.6 (2008): 773-782.

 

※5:
Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men.
Journal of Applied Physiology, 100(4), 1150-1157.

 

※6:
Muscle time under tension during resistance exercise stimulates differential muscle protein sub‐fractional synthetic responses in men.
The Journal of physiology, 590(2), 351-362.

 

※7:
The effect of varying the time of concentric and eccentric muscle actions during resistance training on skeletal muscle adaptations in women.
Eur J Appl Physiol. 2006 Jul;97(4):443-53. Epub 2006 May 10.

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山本義徳|やまもとよしのり(ボディビルダー)プロフィール

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山本義徳(やまもとよしのり)
生年月日:1969年3月25日
血液型:A型
出身地:静岡県

【経歴】
1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
◆著書
・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
・サプリメント百科事典(辰巳出版)
・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
など30冊以上

◆指導実績
・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

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