酵素を「外から」摂取してもムダである! Part 1
「酵素は一生のうちで作られる量が決まっている」とか、「食事から生きた酵素をとる必要がある」とか「死んだ食品には酵素が含まれていない」などといった大ウソがまかりとおっている。どこがおかしいのか、説明していこう。
DNAとはなにか。これは「タンパク質の設計図」である。アミノ酸を組み合わせて、ホルモンや筋肉、コラーゲン、血中タンパクなどさまざまなタンパク質をつくっていく。そして「酵素」も、DNAによってつくられるタンパク質である。
つまりDNAが存在している限り、つまり生きている限り、酵素はつくられ続けるのである。決まった量など存在しない。ただし主酵素の材料となるタンパク質や補酵素の材料となるビタミンやミネラル類をしっかり摂取しておくことが前提だ。
某病院の名誉外科部長は、こんなことを言っているようだ。
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腸相の悪い人たちに共通していたのは、外からの体内酵素の摂取が少なく、体内の酵素を大量に消費するような食生活や生活習慣を続けてきたことです。
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ダウト!
もう理由はわかりますね。さらに理由を追加しよう。
さて、酵素はタンパク質であり、酸や高温によって変性してしまう。そして「消化酵素」によってアミノ酸か細かいペプチドにまで分解されてしまう。だから「生きた酵素食品」なるものを食べたとしても、胃酸で変性・分解してしまい、小腸ではアミノ酸かペプチドにまでなり、酵素としての活性は既に留められていない。つまり「生きた酵素」は、小腸にまで届いた時点でただのアミノ酸かペプチドになってしまっているのだ。
ダーゼンやキモタブといったタンパク分解酵素の薬剤が、消炎鎮痛剤として昔は販売されていた。しかしダーゼンはプラセボとの間に差がなくて自主回収され、キモタブも「原材料が確保できなくなった」として持田製薬は販売中止した。
また消化酵素剤については、胃の中で直接食物に対して働くため、効果はある。
なおコラーゲンの場合、コラーゲンペプチド(特にプロリンとヒドロキシプロリンのジペプチド)そのものに効果があるため、コラーゲンの摂取には大いに意味がある。
ちなみに「玄米は芽が出るから、生きた食品である」なんて酵素派?の医師は言う。彼はきっと、ジャガイモの芽に含まれるソラニンやチャコニンのことは知らないのであろう。
「アク抜き」という言葉がある。これは主に野菜の調理で行われるが、野菜はもともと動物に食べられてしまわないように、微量の毒を持っているのである。玄米のフィチン酸も、その一つだ。
ニンジンに含まれるアスコルビナーゼがビタミンCを酸化することは知られている。他にも山菜や貝類に含まれるアノイリナーゼはビタミンB1を破壊するため、馬は山菜類をあまり食べないそうだ。しかしこれらは熱を加えることで破壊される。加熱によって、安全な食材となるのだ。
また肉や魚のタンパク質も、軽く熱を加えることで消化されやすくなる。生のほうが良いというわけでは決してない。
重要なのは、「体内で生産される酵素」を増やすことだ。このために「外部から摂取しよう」とすると、某名誉外科部長のようなおかしなことを言うようになってしまう。あくまでも「体内での生産」を活性化させなければならない。
酵素にもいろいろあるが、ここでは「生体内抗酸化酵素」、すなわちSODやカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼに絞って考えよう。SODには「銅亜鉛型」と「マンガン型」のものがあり、スーパーオキサイドを過酸化水素と酸素に分解する。またカタラーゼは「鉄酵素」であり、過酸化水素を酸素と水に分解する。グルタチオンペルオキシダーゼは「セレニウム酵素」であり、過酸化水素を水またはアルコールに変える。
となると、これらのミネラルが重要だということが分かるはずだ。
長くなったので続く。