偶然と必然
ジャック・モノーというフランスの哲学者が「偶然と必然」という本を書いている。進化論と分子生物学に興味がある人だったら、読んでおいて損はない。
さて、「偶然」とはなにか。モノーによれば、「突然変異」こそ偶然の産物だとされる。ただしそこには「淘汰」の力が働くわけだが。
淘汰が繰り返されることによって、いきものは合目的的に進化を続け、そこに「必然」があるかのように見えてくる。
さて「運が悪い」とよく言う人がいるが、「運」とはなにか。
転んで怪我したとか、タバコを吸っていて喉頭がんになったとか、仕事ができなくてリストラされたとか、そんなので「運が悪い」と言う人がいる。
しかしこの例のように、理由が明らかだったら、「運が悪い」というのはヘンだ。
そこから逆に考えてみると、「理由がわからないとき」に起こるなにかが、「運」とみなされるのではないか。
しかし、実際にそういうことはほとんどない。
いきなり隕石に直撃されたとしよう。そうなったら普通は、「運が悪かった」と言う。
でも隕石がその時間、その場所に落ちてくるということは、物理的に決められたことなのだ。その物理的理由を、「自分が知らないだけ」なのである。
まったく同じ時期に仕事でリストラされ、恋人にふられ、家族が亡くなり、泥棒に入られたとしよう。
でもそれぞれの一つずつに、そうなる理由があったのであり、そうなるための時期が熟した。だから時期が重なったのも、「必然」なのだ。偶然に時期が重なったわけではない。
さて、世の中の事象は、そのほとんどが綿密な因果関係によって結びつけられ、原因が結果につながっていく。
よって、「偶然こうなった」とか、「運が悪くてこうなった」ということは本来的にありえない。マクロな世界において全ては必然であり、偶然に見えるのは、その因果関係が自分にはわからなかっただけなのである。
となると、現在の事象を全て量子コンピュータに入力したら、未来はどうなるか予測できるのだろうか。
予測はできない。人間の脳の働きはミクロの世界であり、そこには量子力学でいう「不確定性原理」が働くため、私たちが次にどのような行動を起こすかは、確率でしか表すことができないのだ。
なぜこんなことを言い出したかというと、「運を呼びよせるラッキーアイテム」みたいなオカルト商法のインチキさ加減に業を煮やしているからだ。
この開運グッズで彼女ができた!宝くじが当たった!みたいな雑誌広告にダマされる人は、現状を見据える能力が無いか、自分を甘やかしているかだ。
自分をアンラッキーだと思っている人は、そういう境遇にある理由をよく考えてみるといい。そして開運グッズに頼って抜け出すのではなく、現実的な方法を見出し、努力していくことだ。
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