ベントロウとデッドリフトの違いとは
今回は非常に基本的な記事。しかし意外にこの基本的なことが認識されていないようなので、トレーニーの皆さんには今一度確認して頂きたいと思い、この記事を書くことにする。
さてベントロウとデッドリフトの違い。まずベントロウは、前傾したまま腕を後ろに引く。ここでは肩関節の伸展と肩甲骨の内転が主に起こり、広背筋や僧帽筋が使われる。
いっぽうでデッドリフトは股関節の伸展が起こり、また同様に肩関節の伸展と、フォームによっては肩甲骨の内転も起こる。
あ、肘関節とか膝関節も稼働するから・・とかいった枝葉末節についてはここでは無視します。
さてデッドリフトを背中のトレーニングとして行う場合、負荷のかかり方について考える必要がある。つまりデッドで背中に効かせるためには、肩関節の伸展が重要となるのだが、実はトップポジションにおいて、すなわち肩関節が後方伸展されるころには上体が垂直になっているため、「ほとんど負荷がかからない」。またトップで胸を張り、肩甲骨を寄せたとしても、やはり重力の関係で負荷はあまりかかっていない。
つまりデッドは、収縮時に負荷があまりかからないエクササイズなのだ。動作の最後で胸を張っても、実はあまり意味がない。意味を持たせるためには、上体を完全に起こしきらず、やや前傾した状態でフィニッシュし、胸を張って肩甲骨を寄せるようにしたい。
そう、デッドは収縮時の負荷は弱いが、ストレッチポジションでの負荷は強い。ここでのストレッチでポイントとなるのは、「上腕と体幹部のなす角度」である。一般に前傾すればするほど、上腕は体幹部から離れるため、ストレッチが強くなる。ただしチンニングの場合と比べて、上腕と体幹部のなす角度は非常に小さい。
そう考えると、ストレッチエクササイズとして考えるわけにもいかぬ。また前傾を強くし、大きな可動域を狙おうとすると、今度は腰への負担が強くなる。
つまるところデッドリフトのポイントは、「高重量で刺激できること」にある。となると、いわゆる「床デッド」の存在意義が問われることになる。もともと床にバーベルを置いた時点というのは、プレートの半径でバーの高さが決まっている。しかしプレートの半径というのは、人間の身体となんの関係もない。つまりフルレンジではない。しかしデッドについてはこれくらいにしておこう。
次にベントロウについて。これはトップポジションにおいて、強い負荷をかけることができる。クリスマスツリーを作るには有効だ。しかしベントロウのポジションというのは、その態勢をキープするだけで、如何にも数多くの筋肉が使われている。そしてボトムでしっかりストレッチするためには、かなりバーを下まで下ろす必要があるが、そのときは腰への負担も強く、高重量は扱えない。またバーが腹に当たってしまうため、完全収縮もできない。
となると、ワンハンドのダンベルロウのほうがメリットは大きい。少なくとも腰への負担は少なく、十分にストレッチができる。ただし高重量になるとダンベルが腹に当たってしまうため、ダンベルの半径の分だけ、バーベルでのロウイングに比べて収縮が弱くなる。
こうして考えてくると、ロウイングエクササイズはプーリー・ロウイングやロウイングマシンを使い、高重量で行うほうが合理的なのかもしれない。
フリーウェイトにこだわる場合、「ヘックスバー(トラップバー)」を使い、台の上に立って行うという解決策がある。ヘックスバーならば十分に収縮できるし、バーの位置が自然なので腰への負担も少なくなる。ジムに備えてある場合は、ぜひ試していただきたい。ただしグリップ幅は決まっているが。
エクササイズには様々なメリットとデメリットがあり、それらを上手く組み合わせてプログラミングするのがトレーニングの面白さでもある。今回の記事を参考にして、より広く、厚い背中をつくるのに役立てていただければと思う。
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