確証バイアスと自己批判
情報社会の今ではさすがに迷信やゲン担ぎは鳴りを潜めていますが、トレーニングや栄養界における「思い込み」は、なかなか無くなろうとしません。
トレーニングでは「超回復」がその一つで、名前がなんだかカッコイイということもあってか、筋肉の発達原理はストレス応答であるにも関わらず、超回復によるものだと思っているトレーニーもまだまだ多いものです。
栄養面では「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」という間違いが最近まで良く言われていました。特に医師によるそういう発言が多かったものです。筆者は1970年代に発行されたストライヤーという生化学の教科書を古本屋で入手しましたが、それに既に「脳はケトン体をエネルギーとして使う」ということが記されているにも関わらず、です。
「確証バイアス」という言葉があります。これは「信じたいものだけを信じ、都合の良い情報だけを集め、反証となる情報は捨て去ってしまう傾向」と言い換えれば良いでしょうか。
地位の高い人ほど、それを脅かされないように自分にとって有利となる情報だけを周りに置こうとしがちです。
確証バイアスは認知バイアスの一種で、他に正常性バイアス(山火事のときに、いつも通り自分は大丈夫だと思ってしまう)や後知恵バイアス(後になってから「あー、それ分かっていたのに!」)などもあります。
ただし認知バイアスは少ない情報のなかで効率的に物事を予測するための働きがあるとも言えます。
こうしたバイアスを避けるためには、「自己批判」が必要です。ヘーゲルの弁証法的思惟のように、自己を否定して他者となり、その他者において自己のもとにとどまるということ。
そして自己批判するためには脳の働きが正常であることが大事なのですが、加齢によって特に脳の前頭前野が萎縮することがわかっています。前頭前野は判断力や情動のコントロールに関係してきます。
そして前頭前野においてもっとも重要な神経伝達物質が「ドーパミン」です。ドーパミンはチロシンからつくられ、MAOやCOMTなどの酵素によって分解されます。これらの代謝においてはビタミンB群やビタミンC、鉄などが必要になります。また緑茶に含まれるEGCGはCOMTの働きを阻害してドーパミンの働きを強くしてくれる可能性があります。
こうした栄養物質を普段から摂っておくことによって脳の老化を防ぎ、認知バイアスを避けることができるかもしれません。