腸内環境を整えよう!
ウシは牧草を食べるだけで、あの巨体を維持できています。それはなぜでしょうか。草を食べまくったところで、あのような身体には決してなれません。
ヒントは「共生微生物」です。ウシの消化管内には大量の「菌」が棲みついていて、それが草を分解してエサにしています。そしてエネルギーを得た菌は酢酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」を発生させます。
短鎖脂肪酸は1グラムあたり8,3kcalあるとされていて、それがウシのエネルギー源となるのです。そして菌はウシのタンパク源ともなります。
ご存知のとおり、人間にも大量の腸内細菌が棲みついています。ヒトの腸内細菌もエネルギーをつくりだし、またアミノ酸も補給してくれています。
しかし腸内細菌はさまざまな種類があり、ビタミンを合成したり免疫を高めてくれたりする善玉菌があれば、発癌物質をつくったり毒素を発生させたりする悪玉菌もあります。
残念ながら、年を取ると次第に悪玉菌の割合が増えてきてしまいます。
光岡知足著<腸内フローラと食餌>より
では、善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)を含んだ薬剤を飲むのはどうでしょうか。これは残念ながら多くが胃酸で殺されてしまいます。また保存している間に菌が死んでしまう割合も高いものです。
しかし、実は死んでしまった菌も腸内環境を改善してくれるのです。死んだ乳酸菌は善玉菌のエサになり、血圧を下げたりコレステロールを下げたりする効果があることが知られています。
62名の女子学生を対象に行われた研究では、ヨーグルトを一日100ml、4週間に渡って食べ続けることによって糞便中のビフィズス菌の生菌数が有意に増えていることが分かっています。(※)
また、味噌や漬物にある植物性の乳酸菌は強い塩分や酸のなかで育ったため、胃酸にさらされても生き延びる割合が高いと言われています。
味噌や納豆、キムチなどは「発酵食品」と呼ばれますが、発酵とはなんでしょうか。これは微生物の働きによって食物が人間にとって有益に変化することを言います。逆に人間にとって害をなすときには「腐敗」となります。
善玉菌が多いと発酵、悪玉菌が多いと腐敗だと言い換えることもできます。つまり発酵食品は善玉菌が多い食品でもあります。
発酵が進むと、糖質やタンパク質が分解されて甘味成分や旨味成分が増え、美味しいと感じるようになります。
次号では「特にお勧めの発酵食品」について紹介していきましょう。
※:
A Placebo-controlled Double-blind Comparative Study to Assess the Effect of Ingesting Bulgarian Yogurt on Fecal Bifidobacteria Counts
January 2013The Japanese Journal of Nutrition and Dietetics 71(4):171-184
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