メディアの力
歯科医の中ではかなり特殊な経歴と言いますか…生命に関わる疾患と闘う患者さんも沢山いらっしゃったので、当然悲しいお別れとも日々隣り合わせでした。
今でも忘れられないのが、初診でお見えになった働き盛りのとある男性。
上顎の一部が膨らんで来たことで会社近くの歯科クリニックを受診、悪性腫瘍の疑いで大学病院を紹介され診断を受けました。
結果は…余命3ヶ月。
患者さんいわく、上顎の異変に気付いたのは実はかなり前だったとのこと。
「痛みも無いし、じきに治るだろう。」と軽く考えていた上にお仕事の繁忙期が重なってしまい受診が遅れてしまったそうです。
私がメディアを通じた情報発信をしようと思った最初のきっかけは、この患者さんとの出会いでした。
尊敬する先輩が、ローテーションで外来に来る研修医に「この粘膜の変化が正常か異常か…それだけで良いから目に焼き付けて下さい。皆さんが歯科医としてこの後出会う患者さんにこういう変化が現れたらすぐに大学病院を紹介しましょう。」と話していた言葉は私の胸に色濃く焼きついています。
早期発見・早期治療できる歯科医を育てることは教育機関の役割です。しかし、たとえ歯科医のレベルが上がったとしても、患者サイドが自分のお口の変化に無頓着なままでは一向に変わりません。
毎日診る患者さんの数はせいぜい数十人が良いところだけど、テレビで話すことによって何千・何万の人に正しい知識を伝えることが出来る。
私が本業以外のお仕事を始めた理由はこういった経験に基づいています。
*大学院時代の研究室での一コマ。学会発表するスライドとにらめっこしています!顔が怖い…