大人の階段
その時、
小学生とは思えない鋭いタックルが
ボールをピックアップした直後の息子の脇腹に突き刺さった。
絶妙なタイミングと素晴らしい角度に、敵ながらあっぱれ、なんて思った。
痛そうだな、とも少しだけ。
間もなくレフェリーが倒れて起き上がらない息子を心配して監督とメディカルを勤めていた俺を呼ぶ。
視野の広い監督は、その後を考えて交代要員に「行けるか?準備しとけ」と、声をかけて走り出す。
俺は、何も持たないで行くのも息子に申し訳無いと思い、あたふたとメディカルバックを担いで走り出す。
途中、既に立ち上がった息子と目があった気がした。
それは「心配するな、大丈夫」って男の目だと思った。
その後、息子達は激戦を征して千葉県一となった。
帰りの車の中で俺は息子に聞いた。
あのタックルは痛くなかったのかと。
息子はすっかりと大人びた目をして答えた。
「痛いに決まってるでしょ!だってパパに怒られてぶん殴られるよりはマシだよ」
俺は複雑な気持ちで、子どもだった自分を反省した。