行雲流水
同級生のお母さんのお通夜だった。
学生の頃、いつも暇をもて余していた僕らは、
その友達の部屋が溜まり場になっていて、
ダラダラと過ごす僕らに、ちゃんとしなさい!
って、そのお母さんはよくカツを入れてくれた。
棺の中のお母さんは、想い出の中より遥かに小さくなってしまっていて、
それがとても悲しかった。
もう僕らは、自分自身も含めて誰もが数年以内に同じ事を迎える年齢になっている。
そんなことを実感する一抹の寂しさを抱えて、
その頃の友人数人と、美味しいと評判のラーメン屋さんに行った。
そこの店長さんの息子と娘は、以前に僕の空手道場の生徒で、とても熱心に稽古をしてくれた。
ずいぶん久しぶりに行った僕を覚えていてくれた店長さんは、
彼らのその、元気な消息を教えてくれた。
あんなにヤンチャだった息子は、今は自衛官になっていると。
もし僕の教えた事の少しでも、この国を守る若い防人の一部にでもなっているとしたら、こんな嬉しいことはない。
娘さんは、たまたまもうすぐこっちに来ると。
是非、会いたいな。
数年ぶりにあったその子は、
小学生の頃の面影を少しだけ残して、
もうすっかりと、女性と呼べるほど成長していた。
あぁ、
雲が行くように
水が流れるように
自然に時は過ぎて行くんだな。
そんなことを、
評判通り、とても美味しいラーメンをすすりながら思った。