雨の日に肩を濡らすこと
夕方から雨なので傘を置いてきた。
女は浅ましく人の傘に入るくらいでちょうど良いのだ。
雨の予報を聞いた日は、わざと傘を置いてくる。わたしの家にテレビは無いので、誰かから聞いた日に限定される、小さな悪戯。
一緒に濡れてくれる人が好きだ。
一緒に、というのがおそらく大事。
わたしに傘を忘れることを教えてくれた人は、もう夜の女となってどこかの男と消えてしまった。
気まぐれにわたしの小さな傘に入ってきては、わたしを濡らした人だった。
わたしは、傘を差し出さない男とは二度と会わないような生き方をしたい。
最も、わたしは本当は1人で毅然と歩く人が好きだ。高すぎないヒールで、唇には品のあるルージュ。
玄関に置いてきた傘を思いながら。
わたしはまだ意地悪で人に寄っかかる女でいたい。一緒に肩を濡らすことを楽しみたい。
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