黄色い朝顔と幻覚剤
朝から強い日差しが差し込んでいます。でも酷暑だった8月の初めと違って、風のありがたさを心から感じています。
午前中に外出した時、玄関から撮影した景色です。平面的な二次元の写真ですが、六甲山系から吹き降ろされる爽やかな風を感じていただけますでしょうか?
もし山の息吹を受け取られた方は、エアコンのスイッチを切って、部屋の窓を開け放してください。きっと秋の気配を感じると思いますよ。
さて、昨晩読了した本です。
『夢幻花』東野圭吾 著という本です。
この本のタイトルは「むげんばな」と読みます。物語のなかでは、黄色い朝顔のことを指しています。
朝顔というのは青色が基本で、黄色い朝顔は存在しない、と言われています。ところが江戸時代にはその黄色い花をつける朝顔があったそうです。このことはフィクションではなく、事実です。ではなぜ明治以降になって消滅したのか? その謎をサスペンス仕立てにして巧妙に盛り込まれたのが、この物語です。もちろんフィクションですが、事実かと思ってしまうほどリアルに受け止めてしまいました。
物語はいきなり50年前の昭和からスタートします。錯乱した若い男が、日本刀を振り回して大勢の人を殺傷します。その中に幼い娘を残して殺害された若い夫婦がいました。そして物語は一気に平成の現代へと移行しますので、この通り魔事件がどのように関わってくるのか、終盤になるまでわからない構成になっています。
ある独居老人の男性が殺害されます。警察は計画性のない強盗殺人だとして捜査を進めますが、迷宮入りしそうな状況です。金銭やパソコン等が盗まれたのは強盗に見せかけた偽装でした。存在しないと言われている、黄色い朝顔の鉢が盗まれたことを警察は知る由もありません。
被害者の孫娘がそのことに気づき、警察に連絡しますが相手にされません。唯一そのことに何かを感じた刑事が朝顔について捜査を始めます。さらに、ある警察庁の人間も孫娘に接触してきます。それ以外にも様々な人物が関わってくるのですが、私が全く予想していなかった人物が犯人でした。
著者の東野さんのトリックに、完全にだまされてしまいました。さすがです。いくつも素晴らしい作品を書かれていますが、東野作品では私のなかでトップ3に入る秀作だと思います。キーワードは黄色い朝顔と幻覚剤です。この朝顔の種を食べると、麻薬を摂取するのと同じ幻覚が出ます。人間を幻覚の世界に誘う花なので、「夢幻花」と呼ばれているのです。
少し調べてみたのですが、チョウセンアサガオという植物は、誤食すると意識障害や幻覚の症状が出るそうです。だから全く有り得ない物語ではない、ということですね。日本の朝顔と分類が違うのかもしれませんが、かなりヤバイものだそうです。
この作品は当初は連載されたものですが、納得のいかなかった東野さんは、単行本化にあたって全面的に書き直されたそうです。「黄色い朝顔」だけをキーワードにした、全く別の物語だとインタビューで答えられていました。推理小説が好きな方は、是非とも読んでいただきたい作品です。
ちなみに昨年の10月、黄色い朝顔の栽培に成功した、とのニュースをネットで見ました。やはり研究されている方がおられたのですね。江戸時代にあったものと違うものかもしれませんが、黄色い朝顔を追い続けてこられた方が実際にいたことにびっくり。
でもこの小説のキャッチコピーは、「黄色いアサガオだけは追いかけるな」です。黄色い朝顔に関わると、怖いですよ〜〜
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