孤独なのは、誰も歩いたことのない道だから
神戸は秋晴れの青空が広がる涼しい1日でしたが、関東や東北は雨の被害で大変なことになっています。じっくりニュースを見ている時間がないので詳細は把握していませんが、大勢の方が行方不明になられているようです。少しでも早く普段通りの生活が戻ることを祈っています。
さて、昨晩読了した本は、久しぶりの大長編でした。1日100ページ程度しか読めませんので、丸6日もかかってしまいました。
珍しく表紙ではなく中身の写真です。このような小さい字の二段書きで、600ページ以上ある作品です。ですから読了するのに大変でした。文庫本では4冊になっていますが、面倒なので1冊で読める本を借りました。
『世に棲む日日』司馬遼太郎 著という本です。
1冊で読むため『司馬遼太郎全集27』という本を借りたので、こんな分厚い本になりました。でも6日かけても読む価値のあった素晴らしい作品でした。幕末の長州藩について書かれた小説で、吉田松陰と高杉晋作の生涯を描いた物語です。現在は高杉晋作の追っかけ中ですので、そのために選びました。
司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』は当然ながら何度も読んでいます。それで坂本龍馬ファンになったのですが、最近はすっかり高杉晋作の大ファンです。この作品を読んで、さらに高杉という人物が好きになりました。
意外だったのは、彼の自己評価の低さと孤独だったことです。藩校である明倫館では秀才だったのですが、飛び抜けているわけでもない。剣も必死で学びましたが、強い人物は山ほどいます。松下村塾でも久坂玄瑞と比較して、劣等感を持っていたようです。だから自分に何ができるか、ずっと迷い続けていた人でした。私はそのことに強い共感を持っています。
そして群れることが嫌いで、常に単独行動をしているような人物でした。仲間はいても、どこか自分と違うことを感じていたのでしょう。それは彼が天才だったからだと思います。高杉晋作が孤独だったのは、誰も歩いたことのない道を生きていたからだと思います。私もそうありたい、と強く思いました。
高杉晋作の言葉で、私が最も気に入ったものです。
「生とは天の我を労するなり、死とは天のすなわち我を安んずるなり」
この言葉を司馬遼太郎さんは、以下のように説明しています。
晋作にとっての生とは、天がその生に目的をあたえ、その目的のために労せしめるという過程であるにすぎず、死とは、天が彼に休息をあたえるというにすぎない、ということである。
とても素敵な言葉だと思います。人間が生きているのは使命があるからであり、死を迎えるのはその使命が終わったからである、という意味に解釈しました。そしてそれは私の考えでもあります。でもこの言葉を実際に生きていくにあたって、どうしても必要なことがあります。
それは『無私』である、ということだと思います。
自分の私利私欲ののために生きている限りその使命は全うできない、と高杉晋作は考えていたように思います。彼の晩年の人生を見ていると、そうとしか思えません。そしてそれが常人にはできないことであり、彼が天才である所以だと思います。
幕末の長州藩において、「攘夷」という言葉が武士たちを動かしてきました。高杉晋作も最初はそうでした。でもやがて外国人と戦うよりも、開国して貿易を行い、軍事力を養うことが必要だと確信します。しかし「開国」という言葉は死を意味していました。今までの仲間から殺されてしまいます。
その高杉晋作と同じ「開国」を口にしたのが、伊藤博文と井上毅です。高杉の仲間ですが、明治政府の要人となった人物です。この3人に共通していることがあります。それは外国を自分の目で見たことです。高杉は上海で欧米に占領された中国の実態を見ます。伊藤と井上はイギリスに密航して、外国の文化に直接触れています。
この幕末の3人の行動は、現代において大きな示唆をを持つものだと感じています。現在の地球は国家や宗教という、イデオロギーによって争いを繰り返しています。それはそうした小さな範囲のイデオロギーしか見ていないからです。
長州藩が全てだった幕末のこの3人が世界を見たように、国家や宗教を超越したものを現代の私たちは見るべきなのでないでしょうか? 長州人だった彼らが日本人を意識したように、日本人である私たちが地球人を意識する時代を迎えているように思います。そうすることで、現在の地球が抱えている問題の多くを解決できると思います。
私が幕末の時代に惹かれるのは、現在の地球が同じような状況を迎えているからかもしれません。まだもう少し、高杉晋作を追っかけるつもりです。今の私にとって高杉晋作は、この先の人生に関わる大切なことを教えてくれているように感じています。
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