海賊とよばれた男
午前中はかなり激しい雨が降りましたが、午後からは晴れ間が見えている神戸です。肌寒いくらいの涼しさのせいで、お彼岸が近いのを実感しています。今年はシルバーウィークという連休もあるのですね。
昨日の散歩中に出会った彼岸花です。この白い色も綺麗ですね。自然が創造する造形美の素晴らしさに感動します。
この花の美しさに比べて、国会内やその周辺は騒然としています。テレビのニュースはほとんど見ませんから正確な状況を把握していませんが、怪我人が出なければいいのにな、と感じてしまうほどです。
安保法案の賛成派も反対派も、戦争のない平和な世界を築きたい、という思いは同じだと信じています。でも互いのそんな思いを想像しあう余地がないうように見えます。とても平和のための話し合いだとは感じません。見苦しい、という言葉しか出てきません。
反対派の人のなかに、現在の日本が太平洋戦争に突き進んでいる時と同じだ、と言っている人がいました。私よりはるかに年下の方でしたが、よっぽど勉強されているのでしょうか? でないとそこまで断言できないでしょう。だって戦後生まれの私たちにとって、その時代の雰囲気を肌で感じることはできません。
でもそんな時代を生き抜いてきた人をモデルとした小説を読みました。モデルは故人ですし、執筆した作家はもちろん戦後生まれの方です。でもその狂気の時代を、石油という観点からとらえることでリアルに感じさせてもらえました。
『海賊とよばれた男』百田尚樹 著という本です。
読了したのは上巻です。文庫本ですが上下巻とも400mページ以上ある長編です。先ほどから下巻を読み始めました。
めちゃめちゃ面白い小説です。読み始めたら止まらなくなります。2014年に本屋大賞を受賞したのは納得です。主人公は明治生まれの国岡鐡造です。国岡商店という石油を扱う大企業の経営者です。実在の人物をモデルとしています。それは出光興産の創業者である出光佐三さんです。
物語は『玉音放送』の終戦直後から始まり、昭和23年頃までの国岡商店の再建が語られます。戦争で海外の拠点を失い、経営が困難な状態になります。ところが1,000人近くいた社員を、たったひとりもクビにしませんでした。売る石油がないので漁業やラジオの修理などを手がけて、必死で社員を守ろうとしました。
中盤から舞台は主人公の学生時代に戻り、創業から終戦までが上巻で語られます。素晴らしい構成ですね。明治、大正、昭和にかけて、どのようにして日本が戦争に突き進んでいったのか、その一端を理解することができました。石炭から石油に変化する時代であり、石油という資源を争った戦争だということがよくわかります。
そうした激しい時代のなかで、鐡造の生き方はひときわ輝いていました。金儲けのためではなく、消費者と会社が共に喜べる商いを目指します。そのために既得権益と戦っていきます。同業者や外国の業者、そして軍部に対しでさえ自分の主義を貫こうとします。それらの圧力に屈することなく、ひたすら『無私』の精神で生きた人です。
モデルがあるとはいえ、ある程度はフィクションだろうなと思っていました。ところが調べてみると、ほぼ実話に沿って書かれている小説のようです。さすがにびっくりしました。こんな人が実際にいたのですね。本当に魅力的な経営者だと思います。
鐡造は言います、社員は家族だと。だから昔は出勤簿もなければ、就業規則も定年もなかったそうです。管理するのでなく、家族として共に成長していこうとしていました。そしてなぜ鐡造が海賊と呼ばれたのかも、この上巻で語られています。なるほどね、と感心しました。
さて下巻は、戦後の復興期をどのようにして戦ってきたかが書かれているのでしょう。昨日までは日本が戦争に至るまでの疑似体験をしましたが、今夜からは戦後の高度経済成長を疑似体験したいと思います。下巻を読むのが楽しみです!
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