芸術家の卵たちの青春
日に日に冬らしくなってきました。東京は初雪だったそうですね。
神戸もそこそこ寒いのですが、初雪は当分期待できそうにありません。もしかしたら一度も雪が降らないまま春が来たりして。
しかし今日からジャケットの下にセーターを着て外出しました。それまで厚手のシャツだったのです。それでも坂道を登ると汗をかいていましたからね。やっぱりセーターは温かい。気温も低めなので、いつものように汗をかくことなく帰ってきました。そんな寒さのなか、同時に春も見つけました。
自宅の近くで梅が咲いていました。先日からつぼみが膨らんでいるのを見ていましたが、ついに花を開きました。近づくと、なんとも言えないいい香りです。この甘酸っぱい香りをかぐと、春を感じます。
さて、まだデヴィッド・ボウイが亡くなったショックを引きずっている私です。ネットの記事を見ていると、多くの外国のアーティストが追悼の言葉を送っています。それほど大勢の人に影響を与えたミュージシャンだったのでしょう。
昨年ライブに行ったエルトン・ジョン。ポール・マッカートニーやジェフ・ベック。そしてスティービー・ワンダー。私が敬愛するミュージシャンたちは、60代後半から70代前半です。亡くなったデヴィッドと同世代です。これから先も私が生きている限り、彼らの訃報を目にすることがあるのでしょう。わかっているとはいえ、なんとも切ないものです。
でもアーティストたちは世代交代していきます。音楽であれ絵画であれ、芸術家というのは現れては消えていくものです。そして日本にもこれから世に出ようとしている芸術家の卵たちが大勢いるはずです。そんな卵たちのひとときの青春を描いた小説を、昨晩読了しました。
『東京藝大物語』茂木健一郎 著という本です。
茂木さんは脳科学者として有名です。その茂木さんが書かれた小説です。もしかして、初の小説なのかな?
とてもほのぼのとした小説で、同時に芸術に対する若者たちの熱い思いが伝わって来る作品です。その相反する感覚がうまく溶け合って、とてもいい雰囲気に仕上がっている物語でした。
一人称で書かれた物語ですが、一度も『僕』や『私』が登場しません。でも語り手は明らかに著者です。語り手を表す主語が本文から排除されることによって、かえって茂木さんの視点が浮き彫りになっているように感じました。
これはもしかしたら、ノンフィクション? と思わせる小説です。おそらく大部分が実話だと思います。
東京藝大に講師として呼ばれた茂木さん(名前は文中に出ていませんが)の、一年間にわたる学生たちとの交流を描いた物語です。特別講師として実在の人物が登場しますから、なおさらフィクションだとは思えません。主たる登場人物のジャガーという学生は、茂木さんと師弟関係のような間柄になります。
実は茂木さんのツイートに度々登場する人で、まさしく実在の人物です。ですから登場人物たちがとても近くに感じました。
東京藝大というのは超難関校です。一浪、二浪は普通だそうです。合格するだけでもその才能を認められたようなものです。ところが就職率が極端に低い。つまり芸術家として名が売れるのは限られた人だけなのです。そうした悲哀も物語には登場します。
無から何かを生み出すことの苦しみと喜び。それは小説でも同じです。ですから学生たちの姿に、とても深く共感することができました。
卒業を控えた学生に、茂木さんが講義中にかけるセリフに感動しました。
「まとめれば、幸福には、二種類ある、ということです。自分の才能を、最大限に発揮している、フロー、ないしはゾーンの幸福。一方で、自分の足りないところを直視せず、これで大丈夫だと勘違いしてしまう、偽りの幸福。みなさんには、ぜひ、前者の幸福を、目指して欲しいと思います。才能のフルスイングによってしか、到達できない至高の幸福と、才能を小出しにして、送りバントを繰り返すことで、達成される幸福と。君たちは、どっちを選ぶのだろう」
とても心に響きました。ということで、日々フルスイングしていきたいです!
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