夢を追い求めるすばらしさ
引き寄せの法則が働くとして、あなたなら何を引き寄せたら嬉しい? お金? パートナー? それとも仕事?
ボクが引き寄せて嬉しいのは、まちがいなく『物語』。それは小説や映画という作品だけでなく、誰かの人生だったりする。自分ひとりが体験できることは限られているけれど、他人の体験の一部を受け取ることで、人生をより豊かにすることができる。ボクはそう信じている。
人間が猿から進化することができた大きな要因のひとつは、『フィクション』を信じられる、という能力らしい。自分が直接体験していないことでも、その物語を知ることによって、脳の経験値を高めることができる。それを支えているのは、想像力だと思う。
今年になってそんな理想とする引き寄せが、ボクにはうまく働いているらしい。映画でも小説でも、素晴らしい作品にいくつも出会っている。そして昨日読了した本も、自叙伝として、そして小説としても最高の作品だった。
『ロケットボーイズ』下巻 ホーマー・ヒッカム・ジュニア著
先日のブログで紹介した『ロケットボーイズ』の下巻を読んだ。上巻でもかなりワクワクした物語だったけれど、下巻はその感動がぐっと深まる内容だった。ラストではマジで泣いてしまった。著者の人生を書いた実話だから自叙伝なのだけれど、小説としても秀逸な作品だと断言できる。
ウエストバージニア州のコールウッドで生まれ育った主人公のサニー、つまり著者のホーマーは、高校3年生になって『ロケットボーイズ』の仲間たちと、ついに高校生を対象にした科学フェアに挑戦する。
炭鉱しか存在しないコールウッドの高校で、話題になるのはアメフトチームだけ。他の地域の学校の生徒に、学力で勝てるとは誰も思っていないかった。ところがサニーたちは、見事に郡の代表として選ばれる。
それどころか州の大会でも優勝して、全国大会の切符を手にすることになる。そしてなんと、なんと、全国大会でも優勝してしまうのだ。科学フェアにおいて、1960年の全米チャンピオンとなった。それほど彼らの作ったロケットが、高校生のレベルをはるかに超えていたということ。
この物語が感動を誘うのは、コールウッドの町の衰退が対照的に描かれているからだと思う。炭鉱労働者たちは貧しく、いつ事故で死ぬかもしれない環境で働いている。ストライキをしなければ搾取されるばかり。でもストライキを続けていれば、給料がもらえず、食べることにも困ってしまう。
誰もが疑心暗鬼になり、いつ解雇されるかわからない状態だった。そんなコールウッドの町が盛り上がったのが、唯一この科学フェアだった。高校生たちが町の代表として全国で戦う。
敵と味方に分かれていた経営者と労働者は、一丸となって彼らを応援した。やり場のない町の閉塞感が、『ロケットボーイズ』たちによって、まさに空へ向かって吹き飛ばされていったのだと思う。
『ロケットボーイズ』たちは、高校を卒業して全員が大学に進学している。今ではあたりまえのように思えるが、当時のコールウッドでは考えられない快挙だったそうだ。
そして著者も大学に進学して、最終的には夢であったNASAの技術者となり、スペースシャトルの打ち上げ等に貢献している。日本人宇宙飛行士だった土井隆雄さんは、このサニーとは自宅を訪問するほどの友人だったらしい。
物語に関係ないが、土井さんが宇宙に旅立つことが決まったとき、サニーがあるものを持ってきた。それは科学フェアで優勝したときのメダルと、そのときのロケットに使った部品だった。
高校生の自分たちが作ったロケットは宇宙までは飛ばせなかった。でもその想いだけでも、宇宙に連れていって欲しいということだったらしい。
土井さんは快くそれを受け取り、宇宙に持っていったとのこと。『ロケットボーイズ』たちの夢は、こうして叶えられることになった。土井さんがこの本のあとがきで、次のように書かれている。
『夢を持つことはむずかしい。そしてその夢を持ち続けることはもっとむずかしい。だが、この本を読んで、夢を追い求めることのすばらしさにより多くの子供たちが気づいてくれることを願う。そしてより多くの子供たちが、すばらしい夢を見つけることを願っている』
ボクもこの本を読み終えて、まったく同じことを感じた。本当にすばらしい物語に出会えて、幸せだと思った。
これは絶対に映画にするべきだと思い調べてみると、いやはやすでに映画になっていたw
『遠い空の向こうに』という1999年のアメリカ映画。なんとサニーを演じたのは、ボクの大好きなジェイク・ジレンホールだった! これは絶対に観なければ。次にTSUTAYAへ行くことがあれば、必ず探してこようと思っている。
この本はめちゃオススメの物語。何度も読みたくなる作品だと思う。どうやら続編も出版されているようなので、さっそくに読んでみよう!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。