遠い空の向こうに
父と息子という関係は、映画や小説に欠かせない題材だろう。人によって感じ方はちがうが、息子にとって父というのは同性であるだけに特別な存在だ。
ライバルであり、目標であり、忌み嫌う存在であったりする。父のようになりたい、あるいは父ようになりたくない、と息子たちは言う。その言葉のベクトルは反対でも、父という存在の大きさを表していることに変わりはない。
昨日録画した中村勘九郎さん一家のドキュメントを見たが、祖父から父、そして父から息子という関係の深さがわかる。歌舞伎の世界は父と息子という関係性において、古典を継承したり、新しいものを生み出している。
映画では『スターウォーズ』も父と息子の物語だ。ダースベイダーことアナキン・スカイウォーカーと、息子のルーク・スカイウォーカーの複雑な人間関係が映画の主要テーマとなっている。
そんな父と息子について、とても素敵な映画を観た。
『遠い空の向こうに』（原題: October Sky）という1999年のアメリカ映画。
先日『ロケットボーイズ』という、高校生がロケットを飛ばすという小説を読んだ。あまりに素敵な物語だったので、さっそく映画化されたこの作品を借りてきた。
原作のテーマとなっていた父と息子の確執が、映画でも見事に描かれていた。小説はほぼ実話だが、映画ではかなりストーリーが変更されている。それでもこの物語のエッセンスがうまく映画にされていて、原作のファンであっても満足のいく作品に仕上がっていたと思う。
父は息子が炭鉱で働いてくれることを願っている。父の視点は常に地面の底だ。
息子は斜陽産業である炭鉱街から抜け出ることを願い、大学への奨学金をゲットするためにロケットを飛ばしている。息子の視点は常に空の上だ。
その二人の視点のちがいが、親子の確執を見事に象徴している。やがて二人が歩み寄ることで、地面の底でも空でもなく、互いの顔を見つめようとする。その心の変化が、とてもうまく描かれていた。
小説の作者でもある息子のホーマーを演じたのは、なんとジェイク・ギレンホール。ボクの大好きな俳優さん。初めて知ったのが2004年の『デイ・アフター・トゥモロー』だから、この映画の彼はメチャ若い！ 19歳のころの作品だから、まさに映画の主人公と等身大だった。だからまだ彼がブレイクする前の作品になる。
父親はシブさが魅力のクリス・クーパー。原作を読んでいるとき、この人が父親役だったらいいなぁと思っていたくらい。だから映画を観たとき、メチャ嬉しかった。頑固な父親役が見事にハマっていた。
そして原作でも映画でも貴重な役となる女性教師のライリーを、ローラ・ダンが演じていた。これまたピッタリの配役。『ジェラシックパーク』では博士役が似合っていたし、『アイ・アム・サム』で演じた優しい里親の雰囲気も、ライリーという役柄どおりだった。ナイスキャストだと思う。
シンプルだけれど、とてもいい映画だった。エンドロールで本物の『ロケットボーイズ』たちに映像が流れたのもすごく良かった。NASAの技術者となった大人のホーマーが最後に写り、この映画のあとの行く末を教えてくれている。とても元気になる映画だった！
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