音楽がもたらす平和
苦手を克服することで、人生というものに対する視野が広がる。この苦手は普段の行動だけではない。たとえば映画なんかでも苦手がある。
ボクが以前、どうしても最後まで観ることのできない苦手な映画があった。いつも途中で寝てしまうw
その映画は『2001年宇宙の旅』という、SF映画の名作と呼ばれているもの。途中の宇宙船のシーンがあまりに静かすぎて、いつもウトウトしてしまう。
これではいけないと何度も奮起した結果、ようやく4回目くらいに最後まで観ることができた。そしてこの映画が評価されている理由がよくわかり、ボクの視野を新しい分野に広げてくれたと思う。
実はもう1作、同じような映画がある。ミュージカル映画は大好きで、昨日も『ヘアスプレー』を久しぶりに観た。久しぶりといいつつ、軽く10回以上は観ているお気に入りの映画。
歌やダンスシーンを見ると、意味もなく感動したり涙ぐんでしまう。ところがどうしても最後まで観ることのできないミュージカル映画がある。何度かトライしたけれど、いつも挫折していた。ところがついに今日はその壁を越えた!
『サウンド・オブ・ミュージック』という1965年に公開されたアメリカ映画。
古いミュージカル映画って、意味もなく歌い出すのが苦手だった。この映画もその例に漏れず、冒頭でジュリー・アンドリュース演じるマリアが高原で歌っている。その後に続く修道院のシーンでも同じような状況が続く。今まではここで眠くなってしまった。
あぁ、やっぱりこうして意味もなく歌いながら、ドラマ性のない物語が進行していくんだ、という先入観に襲われてしまう。すると眠くなる。
ところが今日はその壁を頑張って越えた。そしてそのことによって、とんでもない名作に出会ってしまった。どうして今まで観なかったのだろう、とマジで後悔している。
それほど夢中になって、最後まで必死で観た。ほぼ3時間という上映時間をまったく意識しなかった。インターミッションを経て後半に入ったとたん、この映画の最初に出ていたテロップが、とても重要な意味を持っていたと知る。
『オーストリア 1930年代 最後の黄金の日々』
この映画がボクは興奮させた理由は、マリアとトラップ大佐の恋愛や、7人の子供たちとの心の交流だけではない。ナチスドイツがオーストリアを併合しようとしているころで、第二次世界大戦が今にも始まろうとする時代。その時代設定が、この映画を素晴らしい作品にさせた最大の理由だと思う。
映画の後半に入ると、黄金の日々は終わりを告げる。オーストリアとは名ばかりで、実質的に支配しているのはナチスドイツ。トラップ大佐もドイツ海軍の士官として徴兵命令を受けている。
このままオーストリアにいても未来はないと知ったこの一家は、子供を連れて亡命することを決意する。ただしそう簡単にはいかない。反乱分子としてドイツ軍に監視されているから、夜逃げもできない。
困り果てたあげく、音楽祭にファリミーで出演することで国外逃亡のチャンスを見つけようとする。その音楽祭のシーンは、今思い出しても感動で涙が出てくる。美しい音楽が、聴衆の心にある平和を願う思いと共鳴する。
音楽というものが人間の心にもたらす平和を、美しく表現した最高のミュージカル映画だと思う。
コアな映画ファンとしてはめちゃ恥ずかしいけれど、今さならながらこの映画の大ファンになってしまった。もしかしたらボクのなかで最高のミュージカル映画になったかもしれない。
ジュリー・アンドリュースはいうまでもなく歌が上手くてキュートだけれど、大佐を演じたクリストファー・プラマーにも惚れてしまった。めちゃかっこいい!
いろんな映画で素晴らしい演技を見せてくれているクリストファーだけれど、最近では2011年にダニエル・クレイグと共演した『ドラゴンタトゥーの女』で演じた素敵な老紳士役が印象に残っている。でもこのときは80歳を越えていたはず。
『サウンド・オブ・ミュージック』の公開時は35歳くらいだから、若い彼を観ることができてとても楽しかった。実に素晴らしい映画だった。きっと一生忘れられない作品になるだろう。何度もブログで書いているけれど、やっぱり先入観ほど無駄なものはないよね〜!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。