心配も苦しみも楽しみのうち
今日は朝から春らしい晴天で、ようやく桜の花が開きはじめたみたい。きっと神戸でも、ここ数日中に桜の開花宣言が出るだろう。
ソメイヨシノのより少し早く咲く、お気に入りのしだれ桜が自宅の近くにある。今日はちょうど見ごろだった。
いつも思うけれど、マジで美しい。「美しい」なんていう陳腐な言葉で表現するのが、この桜に申しわけないと感じるほど。
少し色のちがう桜もあって、どちらもが引き立てあっているように見える。とりあえず今年のお花見の第一弾かな?
来週から次の週にかけては、できる限りの桜を見ようと思っている。毎年書いているけれど、4月というのはボクにとって『命』を見つめる月。有限の命というあたりまえで見過ごしやすい事実を、桜を通じて受け取ることで、自分自身の『命』の終わりをしっかりと感じている。
なぜ毎年4月にそんなことを感じるかは、ちょうど1年前の今日のブログで理由を書いているので、興味のある方は見ていただけたらと思う。
さて、録画している映画やドラマだけでなく、読むべき本にも追われている。今日は図書館に3冊返して、さらに5冊借りてきた。
最低でも2日に1冊のペースで読まなければ追いつかないので、昨日も1冊読了した。
『こころの処方箋』河合隼雄 著という本。
河合さんは心理療法家として知らない人はいないだろう。特にこの本は河合さんの代表作といってもいいほどの著作だと思う。だけど他の著作を読んだことはあるけれど、この本は縁がなくてこれまで未読だった。
人間の心理についてとてもわかりやすく書かれている、とある人の書評を読んでこの本の存在を思い出した。それで手にとってみたが、想像していたよりはるかに素晴らしい内容だった。
何かの雑誌に連載されたものをまとめたもので、55のテーマについて河合さんがエッセイのような感じで書かれている。ちょっぴり嫌味が効いていたり、ユーモラスだったりで、とても楽しい文章だった。
そして実際の臨床経験に基づいて書かれているので、とても説得力がある。ボクたちが当たり前だと思い込んでいるようなことが、足元からひっくり返されるように感じた内容もある。
時代が少し前だけれど、扱っているアイテムが古いだけ。人間の基本的な心理に変わりはない。目から鱗が落ちるような話がいくつもあるので、オススメの本だと思う。
ボクが印象に残っているのは、『心配も苦しみも楽しみのうち』というタイトルの記事。
ある家庭に受験生がいて、浪人をしていた。もちろん合格を目指して勉強に励んでいるが、祖母がとても心配してくれている。だから心配をかけなようにい、あまり詳細なことを話さないようになった。
ところがそのころから、祖母に認知症的な症状が出てきたらしい。なぜだろう、と家族で相談した結果出てきたのは、祖母から孫の「心配」とりあげてしまったことが原因ではないだろうか、という話になった。それで疎外感を覚えているのかもしれない、と。
そしてそれまでの態度を変えて、受験の悩みや心配ごとを祖母に話したらしい。すると祖母はあれやこれやと心配して、意見を言っていくる。浪人生はそれはそれでうるさいと思ったらしいが、驚いたことにピタリと祖母から認知症の症状がなくなってしまった。
人間は心配や苦しみ与えられると辛かったり重荷に感じたりする。その祖母も孫の心配を知ると、やはり辛く感じただろう。だけど人間というものは不思議なもので、共に苦しんだり、共に心配することで、人間としての楽しみのようなものを感じるらしい。
心配や苦しみを何が何でも避けようとするのではなく、ある程度自分のなかで受け入れていくことで、前に進むためのエネルギーになるのかもしれないね。
こんな例がいくつも書かれている。とても勉強になったので、この55のタイトルをパソコンにメモしておいた。たまにはこういう本を読むのはいいと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。