生き残るために本を読もう
外出が1日置きだと、この時期だけの楽しみがある。それは桜の開花状況をリアルに感じられること。
二日前にはちらほら咲き始めただけの桜が、今日は一気にお花見気分にさせてくるような咲き方になっていた。まだ三分咲き程度の桜もあれば、満開が近い八分咲きまできている桜もあった。
おまけに今日はかなり暖かいので、JR六甲道駅近くの芝生の広場では、いくつものグループがお花見をしていた。いい季節になってきたよね。
いつものスーパーに向かう途中の公園では、ユキヤナギと桜の競演に圧倒された。
そして帰り道には神戸市灘区の桜の名所のひとつである、石屋川公園によってみた。
いい雰囲気だったなぁ。ちょっとまだ早いくらいだけれど、この時期の桜も本当に綺麗。もちろん満開も、そしてハラハラと散るころも素敵だよね。
神戸は最初の見ごろが今週の週末になると思う。だけど残念なことに今日の夕方になって雨が降り始めた。そしてこの雨は日曜日まで続くらしい。土日にお花見を予定している人には、ちょと辛い天気になりそう。
でもまだ咲き始めだから、来週の週末でも桜を十分に楽しめると思う。せっかくだから、その時期には晴れるといいね。
今日も仕事に追われているけれど、3月からたまっていたドラマをせっせと観て、ようやく追いついた。それは『火花』という又吉直樹さんの芥川賞作品をドラマ化したもの。
この前の日曜日に放送されたもので第6回目。ラストが第10回だから、いよいよ後半に突入してきた。見るたびに面白くなってきたこのドラマを、さらに深く理解できる本を読んだ。
『夜を乗り越える』又吉直樹 著という本。
これは小説ではなく、又吉さんが書かれたエッセイ。その内容は、本を読むことの素晴らしさを、著者の経験を通じた語ったものになっている。
その内容は小学校時代の思い出から始まり、中学校、高校、そして吉本の養成所へと至る。そしてピースという漫才コンビを組んでから、『火花』という作品をかくに至った経緯も詳しく書かれている。
もちろんボクはすでに原作を読んでいる。そしてドラマも欠かさず観ているけれど、この本を読むことでさらに『火花』という物語が深く理解できるようになった。
決して私小説ではないけれど、又吉さんの生き様が主人公に投影されているのがわかる。かといって当然ながら、まったくちがう面も持っている。だからこそ面白い作品になっているのだろう。
このエッセイでも出てくるけれど、又吉さんは太宰治の大ファン。太宰の小説によって、自分の人生が救われたと思っておられる。
実はボクも太宰治という作家が大好き。最近でこそ読んでいないけれど、中学校から高校にかけて長編小説はすべて読破した。特に『人間失格』という作品が大好きで、その部分でも又吉さんのエッセイを読んで強く共感することができた。
この本の『夜を乗り越える』というタイトルには深い意味が込められている。
太宰治は誰もが知っているように心中している。ところが実際に命を落としたときは、それが初めての自殺ではなかった。過去に何度か未遂を起こしている。
又吉さん曰く、あの最後の夜だけ、太宰は乗り越えることができなかった、と考えられている。
『斜陽』という作品が売れて、かなりの印税が入ってきた。ところがそれを使い果たし、税金の支払いができない。死ぬ理由はそれだけではないだろうけれど、そのことがきっかけになったらしい。
だから未遂で終われば、つまりその日の『夜を乗り越える』ことができれば、彼はその後も生き続けたのではないか、と又吉さんは想像されている。
なぜそんなことを思うかといえば、自分も何度か苦しいときがあったらしい。そんなとき『夜を乗り越える』ことができたのは、本があったから。同じ気持ちを抱く人が書いた小説を読むことで、自分だけではないと救われた気持ちになったとのこと。
どんな人にも、乗り越えられそうにない夜が来るかもしれない。でも本を読むことで、『夜を乗り越える』ことができる。そう信じた又吉さんが、読書の素晴らしさをこのエッセイに書き綴られている。だから『夜を乗り越える』というタイトルになった。
この本を読むと、又吉さんが天才ではなく、努力の人であることがわかる。ボクも熱烈に本を愛している人間だから、とても深く彼に共感することができた。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。