こんな女は嫌だ
真実を書くべき仕事をしている人が、嘘ばかり書くということをよく目にする。今に始まったことじゃないけれど、芸能記者と呼ばれている人たちにそうした傾向が強い。
昔の著名人はその嘘に対して反論する場を持たなかったから、大変だったろうな。今は個人で情報を発信できるから、明らかな嘘であることを表明することができる。もちろんその表明だって嘘の場合もあるだろうけれどねw
だけど相対的に著名人は身に覚えのないことを書かれることが多いらしい。先日キングコングの西野さんのブログでも、そのことについて書かれていた。インタビュー記事だったけれど、言ってもいないことが捏造されていたり、過去の発言を持ち出してきてそのインタビューで答えたようにされていたらしい。
昨日も小林麻央さんがブログで書いていたよね。普段は自分の記事を見ないそうだけれど、たまたま目にしてしまった。すると合っているのは自分のブログが引用されていた部分だけで、残りの99%がまったくの嘘だと述べられていた。真偽のほどは別にして、少なくとも捏造された記事があったのは事実だと思う。
雑誌や新聞が読まれないからといって、そこまでよくやるよなぁ。もし嘘を書いているとしたら、どんな気持ちでキーボードを叩いているんだろう? うしろめたい気持ちがないのかな。それともとにかく売れたらいいんだろうか?
嘘が書きたいなら、小説を執筆すればいいのに。小説なんて嘘の塊だから、思い切りなんでも書くことができる。でも真実に思われる嘘でないと嫌なのかもね。ボクはいくらお金をもらっても、嘘を事実として書くことだけはしたくない。
かといって正直すぎるのも困ったもの。こんな正直な女性は嫌だ、と感じた小説を読んだ。
『日はまた昇る』ヘミングウェイ著という本。
学生時代はトルストイにはまって、彼の著作をほぼ読んだ。だけど他の海外古典はほとんど手つかずなので、今ごろになって必死で読んでいる。
この作品はヘミングウェイの出世作で、初めての長編小説といっていい。ボクとしては『武器よさらば』と『誰がために鐘はなる』に続いて3作目。過去2作は第一次世界大戦とスペインの内戦を描いたものだったけれど、この作品は一時的に平和な時代を舞台にしている。
第一次世界大戦が終わった1920年代半ばで、主人公たちはヘミングウェイと等身大の人物たち。青春時代に第一次世界大戦を過ごしたアメリカの青年たちは、『ロスト・ジェネレーション』と呼ばれている。『失われた世代』あるいは『自堕落な世代』という意味。
戦争で心が傷つき、アメリカ本国にいることができない。パリやスペインにやってきて、未来への希望を欠いた状態で生きている。ただ毎日酒を飲んで、馬鹿騒ぎをするだけ。そんな若者のひとりであるジェイクと、美人のイギリス人であるブレットとの物語。
ふたりの出会いは第一次世界大戦中の病院。怪我を負ったジェイクを看護したのがブレット。ふたりは愛し合っていて、心から相手を信頼できる関係。ところがジェイクは戦争での怪我がもとで、性的不能者となっている。
ところがブレットは自分に嘘がつけない性格。ジェイクを愛していながらも、男なしでは生きていけない。彼女もある意味『ロスト・ジェネレーション』なのだろう。だから取っ替え引っ替え男と寝る。性的なことに関してどうしようもないジェイクは、ブレットを複雑な思いで見ているしかない。
そんなジェイクと友人のビル、そしてブレットと婚約者のマイク、さらにジェイクの友人でブレットに一目惚れしたロバートが、スペイの祭りに行くことで大騒ぎになるというストーリー。
このブレットがどうしようもない。婚約者がいるのにロバートと寝るものだから、彼は勘違いをしてしまう。婚約者のマイクを巻き込んで大変なことになる。ところが火元のブレットは、スペインで若い闘牛士に一目惚れしてマイクの元を去ってしまう。もうハチャメチャな女性www 結局彼女が最後に頼れるのは、ジェイクしかいない。
まさに自堕落がそのまま物語になったという感じ。小説の時代背景を知らないと、面白さがわからないと思う。ヘミングウェイの最高傑作だと言われるのが、納得できる物語。
『日はまた昇る』というのは、明日の希望をさす言葉じゃない。まったく変わることにない日々のやるせない生活をあらわしたもの。ストーリーに激しい起伏がないのは、そのタイトルのとおり。だけどボクの心に強く残る物語だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。