最近ロシアづいているなぁ
ここ数日は爽やかな気候が続いているので、とても過ごしやすい。来週には関西で梅雨入りという予想も出ているので、今のうちにこの気持ちよさを満喫しておかなくてはね。
そんな今日の話題になっているのが、中学生なのに公式連勝記録を更新し続けている藤井聡太4段。今日勝てば20連勝になる。今の段階では結果はわからないけれど、まだまだ連勝が続くような気がする。
将棋や囲碁の世界には、こうした若い天才が登場する。そして欧米ではチェスの天才が現れる。そんなチェスの天才に関する本を読んだ。
『ボビー・フィッシャーを探して』フレッド・ウェイツキン著という本。
この本を原作とした同じタイトルの映画が、1993年にアメリカで製作されている。先日にこの映画を観たのがきっかけで、原作を読もうと決めていた。なぜならこの物語が実話を元にしたものなので、もっと詳しく知りたかったから。
実在するチェスの天才少年だったジョッシュ・ウェイツキンを主人公にした物語で、その父親がこの本を書いたフレッド。映画ではこのフレッドの役を、ジョー・マンテーニャが演じている。
実の父親で、なおかつライターであるフレッド。だから映画よりさらにくわしく、息子のジョッシュの天才ぶりを知ることができた。映画は少し事実を変えてあるけれど、この本は完璧なノンフィクション。フレッドが嘘をついていない限り、事実が書かれているはず。
父親の目線から見た息子のことが書かれていて、映画よりもジョッシュについて深く知ることができる。彼がどんなことで悩み、どれほど天才的な能力を有しているか、そして同時にある意味普通の少年であったこともわかる。
この本の訳者の解説で知ったけれど、青年になったジョッシュがこの映画にカメオ出演して、エキストラでチェスを打っていたらしい。それから彼を指導したブルースというコーチも、映画のブルースを演じたベン・キングスレーとからむシーンがあったとのこと。知らなかったので、もう一度映画を観たくなってしまった。
でもこの本を読んで最も驚いたのは、1980年半ばのソ連の実情。映画ではほとんど出てこなかったけれど、フレッドは息子とコーチのブルースを連れて、ソ連に取材旅行に行っている。当時のチェスのチャンピオンは圧倒的にソ連勢で占められていて、チャンピオン戦を観戦するのが目的だった。
ところが共産主義真っ只中のソ連は、政治とチェスは切り離すことができない。どの権力者がバックについているかによって、勝敗が操作されたりする。だからそんな事情にうんざりしたチェスプレイヤーは、何人もアメリカ等に亡命している。
だからアメリカからやってきた人間は警戒される。彼らが移動するたびに、KCBがあからさまに同行したりする。ユダヤ人やアルメニア人に対する差別も根強く、それらの地域出身のチェスプレイヤーにどれだけ実力があっても、政治的な理由で不遇な環境に置かれる。
とにかく今では考えられないようなことが、1980年代のソ連では行われていた。昨日のブログで書いた『レッド・オクトーバーを追え』という映画と同じ時代だよね。映画のラミウスという潜水艦の艦長は、アルメニア出身という設定になっている。彼が亡命しようとした動機が、この本を読んで理解できた。
ここのところ、妙にロシアづいている。その映画もそうだし、この本もそう。そして先日ブログで紹介した『罪と罰』は、19世紀のロシアの悲惨な現状を描いた物語だった。不思議なもので、こういうことはよくある。きっと無意識に、ボク自身が知識を体系づけようとしているのかもしれない。
さて映画では語られないジョッシュ少年のその後。16歳までの年齢ではチェスの全米チャンピオンを維持したらしい、やはり天才だ。
でもその後はチェスではなく、格闘技に興味を持った。少林寺拳法を習うようになり、今度は全米ではなく世界チャンピオンになっている。やはり天才は何をやらせても天才なのかもね。格闘技の駆け引きでは、チェスの経験が生きたらしい。
さてさて、日本の将棋の天才はどうなったのかな?
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。