駄作から学ぶことは多い
いよいよ夏が来た、という雰囲気になってきた。朝起きたときは比較的涼しいように感じても、朝食のあとに掃除をすると先月とのちがいがわかる。
掃除を終えると、じっとり汗ばんでいる。まだ本格的な暑さじゃないけれど、ぼちぼち心づもりをしておくべきかも。
でも不思議と仕事に集中していると、暑さを忘れている。特に新作を書いているときは、その世界にどっぷりと浸かっているので、意識が肉体のある世界から乖離しているように思う。だからふと我に帰ると、暑いなぁとようやく気がつく状態。
まぁ、それも今のうち。本格的な夏になったら、どれだけ集中していても暑いものは暑い。少しでも涼しい今のうちに書き進めておかないと、そのうち猛烈な暑さでスピードダウンするのは目に見えているからね。
さて小説を書くために必要なのはインプット。いい小説を読んだり、素晴らしい映画を観るのはとても重要な仕事のひとつ。だけど良作ばかりでなく、駄作もかなり勉強になる。なぜ面白くないかを知ることは、なぜ面白いかを理解するよりも学びが多いように思う。
今日の午後に観た映画は、久しぶりの駄作だった。だから勉強になったw
『サイレント・ランニング』という1972年のアメリカ映画。監督が『2001年宇宙の旅』で特撮を担当した人物なので、少し期待していた。SF映画ファンにも支持されているとのことなので、きっといい映画にちがいないと思っていた。
ところが正直言って、かなりのB級映画。テーマは素晴らしい。SF映画としていい線いっている。だけどいかんせん、ストーリーが陳腐すぎる。
この映画の時代、地球全体は人工的に管理されていて、どの地域に住んでも摂氏24度に保たれている。物理学的にありえないけれど、この部分については目をつむろう。地球上から植物が絶滅していて、食料は人工的に合成されたものばかり。
唯一残された植物の遺伝子を守り、いつかは地球に植物を復活させるために、宇宙ステーションのドームで植物の栽培が行われている。主人公のローウェルは植物学者で、ある程度は完璧なシステムを構築していて、緑が地球に戻る日を夢見て全力で取り組んでいる。
ところが地球から指令があり、植物の復帰計画を断念することが伝えられる。ドームの植物をすべて破壊して、すぐに地球へ戻るようにとの命令だった。ところがローウェルは抵抗する。その結果他の3人の乗組員を殺すことになってしまう。
地球には事故で他の乗組員が死んだと嘘をつき、ローウェルは土星の引力に吸い寄せられて遭難してしまう。孤独を感じているが、このブログの画像にある2台のドローンと友情を気づくことで、唯一の緑を守って生き抜こうとする。
ところが捜索隊が発見してくれて、地球に戻るように告げられる。ローウェルは植物が枯れ始めたことに悩んでいたが、あることからその理由を知る。そしてドローンに植物の育成を任せると、ドームを切り離してしまう。そして自分は残された宇宙船を爆破させて死んでしまうというエンディング。
あまりに陳腐なストーリーで笑うしかない。
まずローウェルという人物像が曖昧すぎる。植物学者というのがわかるけれど、あそこまで植物にこだわる彼のバックボーンが見えない。命令に背き、仲間を殺してまで緑を守るという動機が見えない。必然的に感情移入できなくなくなる。
ドローンとの友情も独りよがりの中途半端なものだし、植物の枯れた理由には口があんぐりになった。なんと日照不足とのこと。
おいおい、植物学者が植物の枯れた理由が日照不足だと知るのに、なんでこれだけ悩むのよw 小学生でも知ってるやろ。あまりに安易な発想。
だから最後に自殺する理由も見えてこない。そこまで切羽詰っているように感じないから。時々は仲間を殺したことを後悔しているように見えたけれど、自殺するほど悩んでいるとは思えない。どうもよくわからん主人公なんだよね。
そしてあえてもうひとつ言えば、主人公を演じたブルース・ダーンという俳優さんの演技に不満。宇宙に取り残されたという悲壮感がまったく伝わってこない。先日観た『オデッセイ』のマット・デイモンなんか、観ていてこちらの胸が痛くなってきた。同じ植物学者の宇宙飛行士なんだけれど、ずいぶんとちがう。
せっかくいいところに目をつけたのに、ストーリー構成で台無しにしている映画。この映画が好きな人には申しわけないけれど、ボクは駄作だと思う。だけどいろいろと勉強になったので、観たことは後悔してないよ。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。