脳みそが爆発した!
7月に入って夏らしくなってきたけれど、今のところ関東から北日本にかけて猛暑が暴れている印象だよね。関西は比較的過ごしやすいけれど、さすがに今日あたりは自宅に引きこもっていても、暑さを体感するようになってきた。
それでも仕事のモチベーションを落とさないよう、新しい小説の執筆を楽しんでいる。今のような暑い時期でも書いていて集中できる内容なら、いい感じで仕上がるだろうと思っている。だからいい意味で暑さを味方にしようと奮闘中。
だけど本格的な夏になると、どうしても暑さでぼんやりしてしまう。そんなときは発想がマンネリ化しがちなので、タバスコソースのような強烈な刺激があると目が覚める。そんな強烈な刺激で、脳みそが爆発したようになる小説を読んだ。
『スノウ・クラッシュ』ニール・スティーブンソン著という本。
これはとんでもない小説だよ! まずは長い。この単行本で二段書きになっていて、文字もかなり小さい。それで500ページ近くある。文庫本は上下巻に分かれているから、その長さが想像できると思う。
そしてただ長いだけじゃない。一般的に言えばSF小説なんだけれど、普通じゃない。ボクはよく知らなかったけれど、サイバーパンク小説というものがある。簡単に言えば、デジタル世界を舞台にしつつ、パンクロックのようにぶっ飛んだ物語ということ。
この小説はそのサイバーパンクにコミカルな要素を加えた、ポストサイバーパンクと呼ばれているらしい。だから一部のマニアには絶賛されていて、近いうちに映画化されるという記事も出ている。
とにかく文章が難解。言い回しが難しいから難解なのじゃない。わけのわからない造語が飛び交っているので、その意味を把握するのに時間がかかる。著者は物理学を専攻していたハッカーらしく、デジタルに関する知識量は常人を超えている。コンピュータ用語になじみのない人は、とてもこの物語を読み進められないだろう。
分量的には3日もあれば読めるだろうと思っていたけれど、ほぼその倍はかかってしまった。とにかくいつエンディングに到達できるか不安になるほど先に進めない物語で、読み終わった瞬間には、とてつもない高い山の頂上を制服したような気分になった。
主人公はヒロ・ブタコニストというフリーランスのハッカーで、世界最高の剣士でもある。副業でピザの高速配達人をしている。
もう一人の主人公はY.Tという15歳の女性で、特急便屋という仕事で稼いでいる。未来世界のスケートボードに乗って、高速で走る自動車のパワーを利用して世界中を移動する。
この設定だけで十分にぶっ飛ぶはず。そのうえ『メタヴァース』という仮想世界が登場する。これはいわゆるヴァーチャル・リアリティの世界で、ネットを通じてこの世界にログインする。ヒロはその世界のプログラムを書いたひとりでもある。
現実世界と電脳世界を行ったり来たりするので、何が現実なのかわからなくなってくる。『スノウ・クラッシュ』というドラッグがあり、それは現実世界で人間の脳を古代の共通言語に戻すもので、ヴァーチャル世界ではコンピュータプログラムを通じてハッカーの脳内に侵入して、同じような結果をもたらす。
その『スノウ・クラッシュ』の謎を追って、二人の主人公が活躍する物語。コンピュータの世界と地球に伝わる古代の神話がひとつに融合して、壮大な物語となって展開していく。最初は読みづらいけれど、一度物語に引き込まれるとその世界のとりこになってしまう。
めちゃくちゃ刺激を受けてしまった。このままの物語は書けないけれど、この世界観にかなり影響されている。これが1992年に書かれたとは信じがたい。まだWindows95も発売されていない時代だよ。だけど、2017年の世界をまるで予言しているよう。
ちょっと気になったのは、日本人の文化をあまり理解していないように感じたこと。外国の人にはそれで通用しても、日本人が読めば違和感を覚える。でもそれ以外は、マジですごい小説だった。もし映画化されたなら、ぜひ観たいと思う。だけどこの世界をどのように映像化するのか心配になるけれどね。
著者の次の小説は、さらに強い支持を得たとのこと。近いうちに読んでみようと思う。だけど少し間を置かないと、このポストサイバーパンクの小説はキツイかもね〜w
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。