地球を支配する黒幕は誰?
夏が少し戻ってきたかな? 秋雨前線が北上してきたので、久しぶりに湿気が入り込んできた。ここのところ散歩をしていても空気はカラッと乾燥していたけれど、今日は歩いていると蒸し蒸ししているのがわかった。木曜日くらいまでは、蒸し暑いらしい。
まだ9月に入ったばかりだから、残暑が顔を見せるのは当たり前。だけど身体的なことだけじゃなくて、心理的にも秋を求めている自分がいる。
それは涼しい季節を切実に求めているのではなく、あくまでも時間的なもの。ドキドキしながらもめちゃ楽しみにしていることが来月にあって、ついついそこに気持ちが行くからだろうね。
でも人間の心は不思議なもので、早く来月になって欲しいという気持ちと、まだ今の状態を楽しみたいという想いが同居している。不安と期待が混ざり合うので、今の時期にしか経験できない不思議な葛藤を感じている。せっかくだから、その感覚をじっくり味わっておこうと思う。
蒸し暑いのも木曜日までらしいから、また週末には涼しさが戻ってくるのだろう。さてその木曜日に、地球が消滅するとしたらどうする?
いきなりそんな問いを投げつけられる小説を読んだ。
『銀河ヒッチハイクガイド』ダグラス・アダムス著という本。
ボクはよく知らなかったけれど、この作品はSFファンでは知らない人がないほどの名作らしい。そんな噂を聞いて読んでみたけれど、たしかにめちゃめちゃ面白い。笑い転げながら、よく考えたよなぁ、と感心してしまった。
著書の本職は脚本家で、この物語も最初はラジオドラマとして作られたもの。だけど人気になって、小説としてノベライズされている。物語は地球のある日の『木曜日』からスタートする。
その『木曜日』に地球は一瞬で消滅してしまう。よく道路が作られるときに、収容ということが起きる。行政が対価を払うことで家を壊し、そこに道路を作るというもの。これが銀河単位で実施された。
銀河ハイウェイの建設工事のため、その進路にあたる地球は消滅させることになった。実はアルファ・ケンタリウスに置かれた出張所に、50年前からそのことが通知されていた。だけど月に降り立つのが精一杯の地球人は、そのことを知らない。
そして『木曜日』になって、ヴォゴンという道路整備の宇宙人がやってきて、一瞬で地球を消滅させてしまう。唯一生き残ったのは、主人公であるアーサー・デント。なぜならフォード・プリーフェクトという地球人になりすましていた、ペテルギウス星の宇宙人に助けられたから。
そのフォードは、銀河に存在する『銀河ヒッチハイクガイド』という書籍の編集者、その本の記事を書くために地球へ潜入していたとき、この出来事に遭遇してしまった。銀河をヒッチハイクするための手引書の編集者だから、この二人の銀河の旅がここから始まる。
そこからの展開が、とにかく面白い。結果的になぜ地球が破壊されたのか、その理由も明らかになる。そもそも地球はある存在が支配していた。それは人間ではなく、人間より利口なイルカでもない、実は白ネズミたちだった。彼らは地球の黒幕ならぬ、白幕だということだねw
白ネズミは高度な生命体が変身したもので、彼らは銀河ナンバーワンというコンピュータを発明した。その装置に、『生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え』を計算させる。そして750万年もかけて出された答えは「42」という数字だった。さすがの白ネズミたちも理解できない。
その「42」という答えを理解するためには、究極の『問い』を見つける必要がある。そこで新たに作られたコンピュータが、実は地球だった。そしてようやく答えが出るという5分前になって、ヴォゴン人に地球が破壊されてしまう。
困り果てた白ネズミたちは、唯一生き残ったアーサーの脳を求めようとする。そこにはその究極の『問い』が隠されているから。というような奇想天外な物語。とにかく発想が想定外で、ぶっ飛んでしまった。
そして何よりも文章が最高にイケている。もし日本の作家で同じような文章を書けるとしたら、伊坂幸太郎さんくらいだろうなぁ。とにかく何度もプッと笑ってしまう。
この作品は映画化もされている。調べてみると、ボクの大好きなイギリスの名優たちが出演している。これはなんとかして観なくては。そして、ぜひとも銀河をヒッチハイクする気分を味わってみたいと思う。
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