人を殺すことの重み
太陽はどこへ行ったんだろう? 先週の水曜日を最後に、お日さんを見ていない。今日も朝から厚い雲におおわれていて、お昼前からはずっと雨が降っている。
買い物に出かけたときはなんとか傘なしで歩けたけれど、帰り道は傘がしっぽりと濡れるほどの雨だった。それでも今日の甲子園はクライマックスシリーズの試合をやっている。
今もバルコニーから甲子園の照明の明かりが見えている。タイガースは勝っているようなので、どうにか五回裏の試合成立まで試合を継続してくれ〜!
と思って今の状況を(午後4時28分)確認すると、3回で2対2の同点になっている。わぁ、もうノーゲームでもいいよ〜! どっちやねんwww
さて、映画好きのボクだけれど、どうも苦手なジャンルがある。それが西部劇。子供のころに観たマカロニウエスタンの影響で、どうも馴染めない。ドンパチ撃ち合っているだけにしか見えない。だから殴り合っているだけのカンフー映画も苦手。
西部劇で何度も観ているのは『荒野の7人』くらいだろう。この作品は『7人の侍』のリメイクだから、好きなんだけれどね。それでも一定の評価を得ている西部劇ならば、一度観るべきではないかと思い直した。
実は以前から気になっていて、まだ観ていない作品があった。昨日、ようやく思い切って観た。
『許されざる者』(原題:Unforgiven)という1992年のアメリカ映画。クリント・イーストウッドが監督と主演をした作品で、当時のアカデミー賞を総なめしている。ジーン・ハックマンやモーガン・フリーマンも出演しているので、期待できる作品ではある。
そして初めて鑑賞して、その面白さがわかった。これは西部劇であって、西部劇ではない。なぜなら人の命を奪うことに、神経質すぎるくらいのこだわりを持っている映画だから。普通の西部劇は、簡単に人を殺してしまう。でもこの映画はちがった。
主人公のマニーは伝説的な悪党。若いころには人を平気で殺し、強盗にも手を染めていた。だが愛する妻と出会い、人生を変えていた。妻を病気で亡くしたあとも、酒を断ち、二人の子供を必死で育てていた。
だけど生活が苦しかったんだよね。日本でいえば明治の初めころ。あるカウボーイが娼婦を不当に傷つけた。保安官は温情的な措置を下すが、娼婦たちは納得しない。そこで彼女たちは1000ドルという賞金をかけた。
マニーはその賞金さえあれば、子どもたちにもう少しまともな暮らしをさせてやれる。どうせ相手は殺されても仕方のない悪党たちだ。そう思って誘われた賞金稼ぎに同行する。
ここからがこの映画の見どころ。たしかに不本意ながらマニーは目的果たす。だけど人間の命を奪うことにできる限り抵抗している。時代が時代だから、現代とは道徳観がちがう。だとしても異常なほどのこだわりだった。
ところが保安官を演じたジーン・ハックマンが、とんでもないひどいやつ。結果的にマニーの親友である相棒を拷問で殺してしまう。その事実を知った瞬間、マニーは阿修羅と化す。
絶っていた酒を口にすると、保安官たちを皆殺しにしてしまう。それまで一人の人間を殺すことに躊躇していたのに、あっという間に大勢の人間を撃ち殺す。その驚くほどの変わりように、人間の深い闇を見せつけられたような気がした。
この最後のシーンがあることで、かえって人の命を奪うことの重みを痛感させられる。いや〜、すごい映画だと思う。そこまで計算し尽くされて、脚本が構成されている。お見事だった。これはアカデミー賞を総なめして当然だろう。
エンディンがいいよね。マニーは子どたちを連れて街を離れる。そしてカリフォルニアで商売を始めて、大成功するというテロップで終わる。この微妙なアンバランス感に、思わずニッたりと微笑んでしまった。思い切って観て良かったと思う映画だった。
あっ、4回で(午後4時55分)タイガースが逆転した。やっぱり5回までやろう〜!
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