イカサマ霊媒師と誘拐犯
た、太陽が出たよ〜〜!
午前中だけという限定バージョンだけれど、ほぼ1週間ぶりに太陽の光を浴びた。妻はせっせと布団を干し、ボクは日照不足になりそうなサボテンブラザーズをバルコニーに引っ張り出し、ミューナは手足を伸ばして窓際で日光浴をしている。誰もがこのチャンスを逃してなるものか、という雰囲気だった!
夏は暑くてうんざりする太陽なのに、これだけ顔を見ない日が続くと、青空と一緒に神々しい姿が見られて本当にうれしかった。
だけど今夜には雨らしい。その天気予報を裏付けるかのように、午後からは厚い雲が再び神戸の街をおおっている。昨日の敗戦でファイナルステージ進出を逃した阪神タイガースのような、どんよりとした気分。また明日は傘を持っての外出なのかなぁ……。
こうなったら自分で気分を盛り上げていくしかないよね。中学生のころに聞いていた深夜ラジオのCMで、「暗いと不平を言うよりも、進んで明かりをつけましょう。<聖パウロの言葉より>」と言うセリフを思い出した。
ということで、どんよりした気持ちに明かりをつけるような面白い映画を観た。
『ファミリー・プロット』という1976年のアメリカ映画。アルフレッド・ヒッチコック監督が、最後にメガホンを取った作品になる。
爆笑することもなく、シリアスで深刻になる映画でもないし、積極的に感情移入できるような登場人物が出てくるわけでもない。ただ、なんとなくクスッと笑ってしまう映画だった。
シチュエーションとストーリーがいい。まったく知らない俳優さんばかりだけれど、ほとんどの人が老齢になっても映画に出演されているので、実力派の俳優さんたちなんだろうと思う。
二組のカップルが登場する。ひとつはインチキ霊媒師の女性とタクシー運転手の男性のカップル。もうひとつは宝石商を営みつつ、著名人や金持ちを誘拐することで、身代金として高価な宝石を奪っているカップル。
ある大金持ちの独身女性が、亡くなった妹の子供を探している。インチキ霊媒師の女性はその事実を知り、今は40代になっているその男性を探すことで多額の報酬を受け取る約束を取り付ける。
タクシー運転手たちのバタバタ捜索の結果、宝石商がその男だとわかった。ところがそいつは、とんでもない悪いやつ。里親を火事に見せかけて殺し、誘拐犯として生きている。だからインチキ霊媒師たちが接触してくると、自分の過去や犯罪を暴こうとしていると疑う。
ところが霊媒師たちは、報酬欲しさに必死になって男性を探しているだけ。その二組のカップルのとんちんかんな勘違いに思わず笑ってしまう。一方のカップルは多額の財産があることを知らせようとしているのに、もう一方はそのカップルを殺そうとする。
ラスト近くで何も知らない女性霊媒師が、宝石商にとんでもない遺産があることをようやく告げる。するとその男は、自分が危険を犯して稼いでいたことがバカらしくなるほど喜びの表情を見せる。でも同時に誘拐して薬で眠らされた司教が、自動車の後部座席からポロリと落ちてくる。
その瞬間の霊媒師と宝石商の様子に、思わず笑ってしまった。きっとヒッチコックは、この映画をかなり楽しんで撮影していたと思うなぁ。結果として最後の作品になったけれど、映画を作ることの喜びにあふれていたように思う。
そんなヒッチコック監督の気持ちが伝わってくるから、この映画はなんとなく楽しい気分になるのかもしれない。なかなかよくできた映画だったと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。