SOLA TODAY Vol.458
神戸市民として、ボクはどうも好きになれないことがある。それはメリケンパークに設置される、生きた木としては世界一の高さというクリスマスツリーのこと。まったく見に行きたいと思わない。
樹齢150年のあすなろの木を引っこ抜き、クリスマスツリーとするイベントに不快感を覚えてしまう。もちろんこの樹齢のあすなろの木が、本来は伐採と加工に適しているのは知っている。建築用の資材や、お箸や升の材料として利用されている。
だからボクたちが普段から使っているものに、そうして伐採された木があるということ。資材に使う場合にはもっと早くに伐採する場合もあるので、150年も生きたこの木はまだ幸せなほうらしい
そういう事情を知りつつも、心情的な部分で受け入れ難いものを感じる。生き物というのは、その地に根付いて生息する。なかでも植物は文字どおり土地に根を張って生きている。その環境で育ったからこそ、150年という長寿をまっとうできたんだと思う。
そんな住み慣れた環境から無理やり引っこ抜かれて、船で運ばれ、植物にとって意味もない飾り付けをされて見世物にされる。そんな風に感じてしまうと、ついそのあすなろの木に感情移入をしてしまって、胸が痛くなってくる。勝手な思い込みなのはわかるけれど、ボクの心の問題なのでどうしようもない。
最終的に加工されるとしても、住み慣れた環境で生きさせてやりたい。人間が自然を搾取するのはある程度仕方ない。だけど必要に迫られたものと、そうでないものとがある。この世界一のクリスマスツリーは本当に神戸市民にとって必要なの? そこに命に対するリスペクトを、どうしても見いだすことができない。
この木と負けず劣らずの年齢を持つ生き物がいる。その記事を読んで、ボクは命に対するリスペクトを感じた。
185歳、世界最高齢のゾウガメ「ジョナサン」 英領セントヘレナ島
確認されているゾウガメでは、おそらく世界最高齢だと推測されるジョナサンという亀がセントヘレナ島にいる。確実ではないけれど、ほぼ185歳とのこと。ゾウガメの平均年齢である150歳をはるかに超えている。目は見えなくなり嗅覚もほとんど失っているらしいけれど、聴覚はまだまだ達者。こんな可愛い姿をしている。
どのような経緯によってこの島で暮らすようになったかわからないが、長寿の秘訣はその環境とマッチしたからだと言われている。ストレスもなく、空気がきれいなセントヘレナ島だから、ここまで長生きしたのだろう。そしてそれを見守る人間たちに、愛情をかけられているからだと思う。
世界最高齢だからといって見世物にするために都会へ連れ出したら、すぐに命を失ってしまうのではないだろうか。ゾウガメであれ、あすなろの木であれ、居心地のいい環境に置いてあげるべきだよね。
人間の都合で言葉を話せない彼らをふり廻すことに、ボクは嫌悪感を覚えるのかもしれない。だからあのクリスマスツリーを見たくないんだろうなぁ。
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