あなたはどんな17歳だった?
Twitterでも書いたけれど、12月26日のスーパーって面白いよね。「クリスマスってなんのこと?」という空気が店内に満ちている。その雰囲気が、ボクは大好き。この変わり身の早さは、日本人として自慢できる。
まだJRの駅周辺のほうが、クリスマスを引きずっている印象だった。午前中の駅前では、大きな木からクリスマスのイルミネーションが撤去されていた。ああいうシーンを見てしまうと、どこか興ざめするものを感じる。やっぱりスーパーのように、蓋を開けたらお正月というのが好き。
そんな雰囲気にあおられたわけじゃないけれど、今日から少しずつお正月用の買い物をしている。といっても我が家の場合はせいぜい元旦と2日くらいのお正月だからね。おそらく3日には普通の状態に戻っているはず。
元旦でも仕事はするけれど、普段飲まない日本酒をやりながら、のんびり過ごそうと思っている。こうしてまたひとつ年齢を重ねていく。どこか焦る気持ちがあるのは事実だけれど、こればかりはどうしようもない。すべてが思い出に変わっていく世代だからね。
そういえば10代のころはどんなお正月を過ごしていたんだろう。そんなことをふと思ってしまう小説を読んだ。
『69 sixty nine』村上龍 著という小説。このタイトル読んでエッチなことを想像したあなた! ちがうからね!
このタイトルは1969年のこと。村上龍さんは1952年の生まれなので、著者が17歳のときの体験を小説にしたもの。あとがきにもあったけれど、ほとんど実話らしい。そのことを知って、マジで驚いてしまった。だって実話とは思えないほど奇想天外な世界だったから。
とにかく読み始めていきなり大笑い。結局最後まで笑い続けていた。そしてときどき、ホロっとさせられる。ボクは1962年生まれだから、1969年はまだ7歳だった。ボクにとっては母親と生き別れになった年だから、感慨深い時期ではある。
でもその10年の差は大きい。この時代の高校生にはまだ学生運動の影響が残っていた。そして教師たち大人にとって、戦争は遠い日々じゃない。だけど時代は高度経済成長の真っただ中。なかなか複雑で面白い時代だと思う。
主人公の矢崎は、著者の分身。進学校に通っているけれど、どこか体制に対して不満を覚えていて、大きなことをやりたいと思っている。そこで思いついたのがフェイティバル。自主制作の映画や演劇、ロックバンドの演奏等を企画しようとする。
だけどその根底にあるのは異性にモテたいという不純な動機。だからそのためならなんでもやらかす。松井和子という学校一の美人のハートを射止め、さらに映画に主演してもらうため、あろうことか学校のバリケード封鎖を計画する。
学生運動の思想なんてこれっぽっちもないのに、全学連の連中を巻き込んでしまう。それは成功して和子のハートを射止めるけれど、学校にバレて停学処分を食らったりする。だけど最終的にはフェスティバルを成功させる。
とにかく文章が面白い。文体の面白さもあるけれど、とにかく高校生たちのはちゃめちゃの生き様に爆笑してしまう。バリケード封鎖のとき、下痢でトイレを我慢できなかったある生徒が、校長先生の机の上でやらかすシーンでは、笑いすぎてお腹が痛くなって死にそうだった。
ボクの17歳と比較するとかなりちがう。ボクの時代には学生運動なんて消滅していた。だけどホルモンの変化を受けた男子高校生がおとなしくしていたわけじゃない。社会や大人に対するどうしようもない憤りは、暴走族というちがった形で発現していた。
この小説を読みながら、どこからうらやましいものを感じた。ボクは高校があまり好きじゃなかったから。友達はいたし、遊びまわって楽しく過ごしていた。だけどいつも言葉にできない孤独を抱えていた。だから心から楽しいと感じることなく、楽しいフリをしながらそのまま卒業した。その感覚は今でも同じかもしれない。
そう思うともっと何かやれたんじゃないかな、と後悔することがある。朝のブログでも書いたけれど、17歳は酒びたりの日々だったからね。未来の展望もなく、ただその日を生きていただけ。頑張ったってどうしようもないやん、という諦念に圧倒されていたのかもしれない。
その反動で、今になってあわてて必死で生きているけれどねw
きっといろんな17歳があるんだろうな。あなたはどんな17歳だった?
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