耐えることが強さじゃない
新年が来ると、必ずやっていることがある。1月1日なら、今日が1回目の掃除だと口に出すこと。2日から2回目になる。
1月中くらいはカレンダーと連動しているので、簡単に数えられる。だけどそれが2月、3月と時が進むと、暗算をするのが面倒になってくる。そしていつしか数えることをやめてしまうんだけれど、それがこの時期になったら復活する。
そう今朝は今年になって363回目の掃除をした。毎日欠かさず朝に掃除をしているので、年末になると回数計算が復活するというアホな話。それでもさすがに363回という数字を意識すると、日々の積み重ねというものが無視できないパワーを持っていると感じる。
苦もなく毎日できるということは、才能があると言っていい。ボクが年間を通して休まず小説を書いているので、そのことに関しては才能があると自負している。そういう意味で言えば、ボクは掃除の才能もあるのかもね。面倒だと思うこともあるけれど、終わると最高に気持ちがいいので、きっとそうなのだろう。
大掃除は秋に終わらせているので、基本的に年末の掃除はいつもと同じ。お正月を迎えるので、ちょっと丁寧になるくらいかな。今年も残すところ3日を切った。2018年になったら、また1回目から数えることになるんだろう。
さて、今日は今年最後かと思うほど感動で号泣する映画を観た。
『カラー・パープル』という1985年のアメリカ映画。監督はスティーブン・スピルバーグで、『ゴースト』という映画で有名なウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作品。
公開時に観た記憶があるんだけれど、まったく内容が思い出せない。まだ23歳のボクにとって、心に響くことがなかったのかも。なんとなく人種差別の映画だと思い込んでいたところがあって、久しぶりに再見してみた。
ところがいわゆる白人が黒人を差別するという意味での、人種差別の映画じゃなかった。昔のボクはいったい何を観ていたんだろう?
19世紀の終わりから20世紀前半のアメリカ黒人社会を描いた映画だった。まだ男尊女卑が強い社会で、男性による女性の虐待がテーマになっている。同じ差別映画でも、DVを含む性的な差別が取り上げられている。
主人公のセリーが愛するのは、妹のネッティ。セリーは再婚した父にレイブされ、二人も子供を産んでいる。その子供は牧師夫婦に預けられてしまう。義父からは性の道具としての扱いしか受けていなかった。そんな義父は妹のネッティにも関心を持っている。
降ってわいた結婚話によって、セリーはアルバートという中年男性に嫁ぐ。ところがそのアルバートも義父に輪をかけたようなDV男。セリーを性の対象と家政婦としか思っていない。そのうえ義父の元から逃げてきた妹のネッティにも手を出そうする。
なんとか妹はアルバートの魔の手から逃れるが、怒り狂ったアルバートに家を追い出される。ネッティは必ず手紙を書く、死ぬまで書き続けると言って姉に別れを告げる。でもアルバートはセリーに郵便箱を開けることを許さず、ネッティからの手紙はすべて隠してしまった。
それから何十年も苦痛の日々が続く。手紙をくれない妹を心配しながら、セリーは日々の生活に追われる。じっと耐えて目立つことなく、涙をこらえて必死で生きていた。
ところがそんなセリーを助ける女性たちが登場する。映画の後半は一気にその勢いが増し、ラストシーンではついにセリーが夫の暴力と横暴に立ち上がる。ただ耐えることが強さじゃじない。本当の強さとは、自分のために生きることだとセリーは気づくという物語。
その反抗シーンはには、思わず拍手を送りたくなった。最高に気持ちがいい。そして当然ながら、エンディングにはネッティとの再会も待っている。さらに驚いたことに、セリーの二人の子供をネッティは家族として成人するまで育て上げていた。大人になった子供たちとの再会シーンで、めちゃくちゃ泣いてしまった。
ウーピーといえば『ゴースト』や『天使にラブソングを』のコメディ的なイメージがあるけれど、デビュー作がこれほどシリアスな役だったとは。その耐える姿がいまでも心に残っているほど、素晴らしい演技だった。
そして今回は悪役だけれど、アルバートを演じたダニー・グローバーも最高だった。他の映画では優しい人を演じることが多い彼だから、こんな役もできるのかと感心してしまった。いい俳優さんだよね。ダニーがメル・ギブソンと共演している、コメディアクションの『リーサル・ウェポン』シリーズが観たくなってきた。
めちゃ若いローレンス・フィッシュバーンもいい雰囲気だったなぁ。『マトリックス』のモーフィアス役を思い出せないくらい。とにかくこんな素晴らしい映画だとは思わなかった。アカデミー賞を取れなかったのは、スピルバーグに対するやっかみだと思う。再見してよかったと、心から思った。
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