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高羽そらさんインタビュー

情勢を読む力

今朝の神戸の最低気温は6.1度。ここ数日の氷点下近い気温に比べたら、かなり暖かい。おそらく最高気温も10度を超えているだろう。

 

でも自宅にこもっていると、気温の高さをあまり感じない。いつもと変わらない寒さを感じながら仕事をしていた。

 

これってある意味象徴的な出来事だよね。本当の状況というものは外に出ないとわからない、ということかも。どれだけ社会がきびしいと自宅で思っていても、実際にその風圧を受けないと実感できない。それでは情勢を見誤ってしまう。

 

激しい流れに飲まれることで、時代を読む嗅覚が発達するのかもしれない。そんなことをひしひしと感じる本を読んだ。

 

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『ワイルド・スワン』下巻 ユン・チアン著という本。

 

先日のブログで紹介したドキュメントの下巻で、世界的なベストセラーになっている。20世紀初頭から後半にかけて、著者の祖母、母、そして著者自身の中国での体験が、赤裸々につづられた作品。ボクは陳腐な表現しか浮かばないけれど、筆舌に尽くし難い、としか言えない内容だった。

 

上巻は1952年生まれの著者が中学生のころまでの出来事。下巻は『文化大革命』という、毛沢東による粛清の嵐が中心になって書かれている。他の書籍で読んで勉強はしていたけれど、共産党の幹部を両親に持つ著者の体験は、ちがった角度から粛清の恐ろしさを知ることができる。

 

著者の世代は、毛沢東を『神』のような存在として教えられる。だから疑うということがない。それゆえに、神の言葉は絶対だった。現代の北朝鮮を思い浮かべたら想像はつくだろう。だけど父と母の迫害を通じて、ようやくそれが洗脳だったことを著者は気づく。

 

著者の父は頑固者だったけれど、一徹な人だった。共産主義が本当に世界を救うと信じていて、迷うことなくまっすぐに生きていた。賄賂は受け取らないし、不正はしない。幹部の家族である子供たちへの特権も認めなかったほど。

 

だけど文化大革命の嵐は、そんな父を餌食にした。理由なんてない。全ての中国人のうち、一定の割合で裏切り者がいるはず。だからそいつらをあぶり出せという毛沢東に命令にしたがって、無理やり罪人を作り出している。そこにあるのは密告と陰謀の闇だった。

 

著者の父と母は反対勢力にはめられ、敵対的な人間として糾弾される。1966年に始まった文化大革命で、母親の名誉が回復したのは1971年だった。だけど父はもっとひどい。

 

度重なる拷問で精神を病み、統合失調症になる。父は1975年に亡くなるが、名誉が回復したのは1978年。毛沢東が死去して、鄧小平が復権してからのことだった。

 

父の名誉を回復するチャンスは何度かあった。父が逮捕された1967年、母は北京に行って周恩来との面会に成功している。毛沢東にしたがうしかなかった周恩来だが、文化大革命が国民を苦しめていることは理解していた。だから著者の母に、父親を不問に付すようにとの直筆書面を書いている。

 

母はそれを手にして戻るけれど、提出できる相手がいない。なぜなら役所は造反派に牛耳られていたから。もし提出しても、その書類は握りつぶされてしまうだろう。母親の情勢を読む能力は、書類を隠すことを選んだ。そしてそれは正解だった。もし当時にその書類を見せても、父の迫害は止められなかっただろう。

 

だけど無駄にはなっていない。著者が1978年にイギリスへ留学しようとするときのこと。成績は申し分ない。だけど父親の名誉が回復されていないので、国外に出るのは絶対に無理だった。

 

そこで母親は、すでに故人となった周恩来の書類を持ち出し、共産党本部にかけあう。その甲斐あって、ようやく父の名誉が回復され、著者はイギリスに留学できることになった。

 

母親の情勢を読む力がなければ、著者は留学できなかっただろうし、中国で発禁処分となっている、この本も生まれなかっただろう。そして世界中の人が、毛沢東の狂気を知ることがなかったかもしれない。

 

言葉にできないほど、すさまじい事実だった。ここまで人は残酷になれるのか、と読みながら人間不信になってしまいそうだった。そして同時に、そんな苦難のなかで愛と思いやりを持って生きていた人たちに感動した。大勢の人に読んで欲しい。心からそう思う作品だった。

 

decoration/dcr_emoji_238.gif『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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