小説らしさ、映画らしさ
神戸には美味しいパン屋さんが多い。ボクが住んでいる灘区も、パン屋さんの激戦区だと言っていい。
神戸に引っ越してから今年の秋で10年になるけれど、今のところ灘区でボクが1位に推薦するパン屋さんは不動の地位を守っている。けれども世の中は変化して行くもの。新しいお店が登場すれば、不動であり続けることは難しくなるだろう。
阪急六甲駅近くに、新しいパン屋さんがまもなくオープンしそう。きっと今月中には食べることができるはず。それ以外にも名が知られていてまだボクが食べていないパン屋さんもある。そんな一軒で、今日はパンを買ってみた。
さっそくオヤツに食べたけれど、これがうまい! パンを焼いている人の、優しさがそのまま生地になったようなパンだった。初めて入ったお店だけれど、一躍ベスト3に躍進した。この先も何度か食べてみて、さらに加点できるかが楽しみなところ。現段階では、1位の座は動いていないけれどね。
とにかく食べ物は、口コミだけではわからない。好みのちがいもあるだろうから、自分に口に会うかどうかは食べるしかないものね。そうすることで、それぞれの店の良さが理解できる。
これは映画や小説でも言えること。口コミだけではわからない。だから実際に体験することが大切になる。原作は以前に読んだけれど、ようやく映画を観ることができた作品がある。
『インフェルノ』という2016年のアメリカ映画。説明するまでもなく、『ダヴィンチ・コード』の原作者であるダン・ブラウンの最新作。と言っても映画の話で、小説では『オリジン』という作品が、今年の2月に翻訳されている。
その『オリジン』も、この写真のトム・ハンクス演じるロバート・ラングドンが活躍する物語。図書館での予約数がとんでもない数なので、いつ読めるかわからないけれど……。いずれ映画化されると期待しているが、今のところ映画の最新作はこの『インフェルノ』になる。
比較的新しい映画なので、ネタバレはやめておく。人口が増えすぎて人類が自滅すると考えた科学者が、あるウィルス兵器を作る。そしてXデーにそのウィルスを拡散しようとする物語。
だがどこにウィルスが隠されているかわからない。それはウィルスを阻止しようとするWHOも、ウィルスを拡散しようとする闇組織も同じだった。なぜなら隠し場所のヒントだけを残して、首謀者は自殺してしまうから。
もしWHOにウィルスの場所を特定されたら邪魔される。そこで闇組織もウィルスの場所を見つけて、ウィルス拡散を確実に実行させようとする。二つの組織に挟まれた主人公は、我らがラングドン教授。その謎を解けるのは、おそらく彼しかいないから。
途中までこの映画は、小説に忠実に作られていた。映画にしては珍しいくらい、完璧な映画化だった。ところが驚くことに、エンディングがまったくちがう。なんとなく予想していたけれど、ガッカリするちがいではなかった。
結果だけ言えば、ほぼ180度はちがう結末と言っていいだろう。だけどどちらもいいんだよね。
小説の結末は、小説だからいい。そこまで読み進めて、驚くような結果が待っている。そしてその余韻を味わいながら、読者はその結末を受け入れて行く。
ところが映画でその余韻を出すのは難しい。だから変更されたんだと思う。だけど映画の結末も、とてもよかったと思う。映画としては、絶対にこの終わり方のほうがいい。
どちらの作品も、小説らしさ、そして映画らしさが追求されている。もしこの作品に興味を持つ人がいたら、まずは原作をオススメする。その結末を味わって欲しい。そうすれば映画の結末も、パラレルワールドとして楽しめると思う。
さてさて、『オリジン』は映画化されるんだろうか? トム・ハンクスも歳を取っちゃうからな。とにかく原作を読まなければ。
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