億りびと、じゃないほうの話
今日はいちおう平日になるので、朝から通学する子供たちの声が聴こえていた。街を歩いていても平日感があって、少しほっとする。やっぱり平日のほうが好きかな。
今日も初夏のような晴天なので、本当は休みたい人も大勢いただろうね。今日から5月。まさに五月晴れの1日だった。
自分が死ぬときは、今日のような天気だったらいいな。そんなことを感じる映画を観た。
『おくりびと』と言う2008年の映画。とてもいい映画だと、かなり話題になったので気になっていたけれど、へそ曲がりのボクはまだ観ていなかったw
たしかに素敵な映画だった。チェロ奏者だった小林大悟が、納棺師として一人前になって行く姿に共感できた。そして人間の『死』をあらゆる面からとらえていて、誰もがいつかは死ぬということを自覚させてもらえるのがいい。
この映画を観ていて、大吾を演じた本木雅弘さんの執念のようなものを感じた。調べてみると、彼がこの作品の映画化を企画していたんだね。だけどその意気込みが空回りしているわけじゃなく、とても自然だった。号泣するほどの内容じゃないけれど、ちょっと胸がキュンとなる物語。
特によかったのは、山崎努さん。さすがだよね。山崎さんの出演作品を数えきれないほど観ているけれど、代表作のひとつとなるような名演技だったと思う。事務員を演じた余貴美子さんもすごく印象に残っている。朝の連ドラにも医師役で出演されているけれど、本当に素敵な女優さんだよね。
違和感を覚えたのは、広末涼子さんが演じた大悟の妻の美香。これは広末さんの演技の問題じゃなく、こういうキャラなんだろう。ボクの感覚として、夫が納棺師の仕事をしていることを知ったとき、あそこまで拒絶反応を示すだろうか、と少し引いてしまった。まぁそうしないと、後半の感動につながらないんだろうけれど。
でも「汚らわしい」とまで言うだろうか? 彼女がそう言わざるを得ない過去があるなら別だけれど、死者に接する仕事に対して実家に戻るほどの拒否感を見せるのが異様に見えてしまった。ボクは納棺師という言葉をこの映画が公開されたときに知ったけれど、拒否反応なんてまったくなかったなぁ。
納棺師の所作を見ていて、とても美しいと思った。だけど現実問題として、今はほとんどの人が病院で亡くなる時代。亡くなったあとの「エンゼルケア」は看護師さんがやってくださるので、この映画のような納棺師の人が活躍する場はそれほどないんだろうなと思った。だから現代では「おくりびと」よりも、仮想通貨で儲けた「億りびと」のほうが話題になってしまうのかもw
気になることはあるけれど、本当に素晴らしい映画。どれほど仲のいい人でも、いつかは死に別れることになる。そのときどんな風に見送ることができるか。そのことを観ている人に問いかけてくる作品だった。
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