子離れできない母親の末路
雨はすっかりあがったけれど、少し肌寒い神戸。温度差の上下が激しいと、本当に身体がしんどいよね。20代のころはそんなこと思わなかったから、きっと年齢のせいもあるんだろうな。まぁ、しゃぁないか。それだけ歳を食ったということ。
そんな我が家で最長老の座に躍り出たのは、猫のミューナ。ちょっと前まで赤ちゃん猫だと思っていたのに、来月の下旬になると満12歳。人間でいえば、64歳になる。すっかりおじいちゃん猫になった。
とにかくミューナが天寿を全うするまでは、ボクも妻も先立つわけには行かない。普通は子供を見送る親は不幸だけれど、ミューナの場合はすでに彼のほうが歳上だから。順当に逝ってもらわないと困る。
と言いつつ、ボクにとって、おそらく妻にとっても、ミューナは子供のようなもの。そして二人そろって、子離れできていないと思う。だって夕方まで外出しただけで、彼のことを心配しているんだからねw
でも猫だからまだ許される。それが人間になると、ちょっと困ったことになる。子離れできない親がどうなるか、というちょっぴり怖い映画を観た。
『ミルドレッド・ピアース』という1945年のアメリカ映画。ジャンルとしてはミステリー作品になる。この時代の映画はテンポが鈍いことが多い。だけどこの映画は、時間を忘れるほどうまく構成されていた。
ミルドレッドは二人の娘がいる。次女のケイは普通の女の子だけれど、長女のヴィーダは贅沢好きのわがまま娘。次女は病気で早世するから、ミルドレッドの生きる希望は長女のヴィーダだけという状況だった。
ある日、ミルドレッドの夫のモンティが射殺される。犯人として逮捕されたのは、ミルドレッドの元夫であるバートだった。この犯人探しが、この映画の見どころ。
ミルドレッドは夫のバートと離婚してから、必死で娘を育てていた。だけど普通の稼ぎではだめ。なぜなら長女のヴィーダは離婚前の贅沢がしみついているので、貧乏暮らしは耐えられないと泣き叫ぶ。だからミルドレッドは、必死で働く。
ウエイトレスをやっていることを娘に隠してまで、死にものぐるいで働いた。ウエイトレスをやっているだけで、ヴィーダに軽蔑されるから。そのうち才覚を表し、レストランの経営者となってかなりの資産家になる。
そのころ出会ったのがモンティという貴族の男性。ヴィーダはそんなモンティとの生活に憧れて、紆余曲折のあとミルドレッドはモンティと再婚する。本当は愛していないけれど、貴族の豪邸で暮らしたいというヴィーダの願いをかなえるため。この段階で、かなりのバカ親であることが露呈する。
そのうえ長女のために湯水のごとくお金を使うから、破産寸前にまで追い込まれる。夫のモンティは没落して、ミルドレッドから金をせびるばかり。途方に暮れたミルドレッドは、モンティを殺害しようとする。
ところが別荘にいる夫に会いに行ったとき、ヴィーダとモンティの関係を知ってしまう。元から二人は愛し合っていて、ミルドレッドは夫と娘に利用されていただけだった。とまぁ、とんでもないことになる。修羅場だよね。
だけどモンティを殺したのはミルドレッドじゃない。勘のいい人なら想像できるよね。甘やかし過ぎた結果、娘をとんでもないモンスターにしてしまったという物語だった。
原作では殺人事件が起きないらしい。後に原作に近い形で、ドラマ化されている。そのドラマでミルドレッドを演じたのは、ケイト・ウィンスレットとのこと。彼女のミルドレッドなら見たいなぁ。
だけどこの映画でミルドレッドを演じた。ジョーン・クロフォードという女優さんも、とても素敵でこの役にピッタリ。この映画でアカデミー主演女優賞を受賞したのは、当然の結果だと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。