言葉にする勇気
今日もいい天気だなぁ。きっと行楽地は賑わっているだろうね。そんなことを想像しながら、今日は引きこもってパソコンとにらめっこ。
新作小説が佳境に入って来たので、しんどいけれど書いていて楽しい。言いたいことを話したり、書きたいことを発表できるのは、本当に幸せだと思う。
他人を誹謗中傷するのはダメだけれど、自分の信条を述べることに問題はない。だけどそれができない国だってある。来月12日の米朝会談が注目されている北朝鮮では、言いたいことを口にすれば命に関わる。
だけど会談の相手国であるアメリカでも、同じような時代があった。それは1950年代の『マッカーシズム』という『赤狩り』の嵐。
第二次世界大戦でアメリカとソ連は手を組んで、日本を敗戦に追い込んだ。それゆえアメリカ人で共産主義に感銘を受けて、共産党に入党する人が増えた。だけど戦後に冷戦状態となり、アメリカで共産党員であることは、スパイと同じ扱いを受けた時期がある。
そんな時代に、自分の主張を曲げなかったニュースキャスターがいる。CBSテレビのエドワード・R・マローという人。その実在の人物を描いた映画を観た。
『グッドナイト&グッドラック』という2005年のアメリカ映画。ジョージ・クルーニーが監督、脚本、さらに出演までしている。あえて全編をモノクロ撮影にしたことで、実写映像とマッチして臨場感が増していたと思う。
マローを演じたのは、デヴィッド・ストラザーンという俳優さん。どこかで見たことがある顔だと思って調べてみたら、『ジェイソン・ボーン』シリーズの映画で、ノア・ヴォーゼンというCIAの幹部を演じていた人だった。
他にもロバート・ダウニー・Jrや、パトリシア・クラークソンという名優が出演している。とても見ごたえのある素敵な作品だった。
1950年代に、ジョセフ・マッカーシー上院議員を中心にして進められた赤狩り。それゆえ「マッカーシズム」と呼ばれている。本当にスパイを見つけるのなら意味があるけれど、それはほんの一部だった。
結局は気に入らない人間を、共産党員として告発するということが起きていた。だから誰もが口をつぐみ、自分は共産党員でないことを訴える。過去に共産党員だった人だけでなく、一度でも集会に参加した人や寄付をした人は、いつその事実が暴かれるかと気がきではなかった。
あるとき空軍の中尉が、父親と妹が共産党員であるという理由で危険人物と見なされ、除隊勧告を受けるということが起きる。そのことを耳にしたマローや番組のスタッフたちは、危険を覚悟でこの事実を報道する。
当然ながらスポンサーは圧力をかけてくるし、CBSの会長もマローを問い詰める。そして挑戦を受けたマッカーシー上院議員は、マローを名指しで論争を挑んで切る。もちろん空軍幹部も恐喝まがいの行動に出る。
誰もが言いたいことを口にできない状況だった。そんなことはおかしい、と本当は誰もが気づいている。だけど仕事を失ったり、家族を危険な目にあわすことはできない、だから黙るしかなかった。
だけどマローと番組のスタッフは、最後まで真実を報道することに徹する。そのなんとも言えない緊張感と恐怖、そして彼らの気迫と勇気が、この映画全体に満ちていたように思う。そして彼らの強い思いは、大衆に通じていく。
地味な作品だけれど、心に強く訴えかけてくるものがあった。本物のマローの写真を見たけれど、マジでそっくりだった。いい映画だったなぁ。
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