内なる宇宙の正体
西城秀樹さんの訃報に驚いた。まだ若いよねぇ。脳梗塞のリハビリをされていたのは知っていたけれど、まさかこんなに早く亡くなるとは思わなかった。
ボクの世代なら、全盛時の西城さんを知らない人はいないはず。洋楽ばかり聴いていたボクでさえ、彼のヒット曲はほとんど歌える。新御三家の3人のなかでは、西城秀樹さんが一番好きだったなぁ。
それにしても最近思うのは、著名人の訃報に自分の年齢を感じてしまうこと。ボクが子供のころ、すでに中年や壮年だった方の訃報はそれほど驚かない。まぁ、順当だなぁと思う。
でもここ数年、えっと思うような方が亡くなっている。多少の早い遅いはあるとしても、驚くことが増えてきた。それはまだ若いころのイメージが強く残っているから。言い換えれば、それだけボクも年齢を重ねているということだよね。
ということは、これから訃報を耳にするたび、常に驚くことになりそうな気がしてきた。50代も中盤を過ぎると、『死』が身近になってくる。けして無視しているわけじゃないけれど、リアリティが増しているような気がする。残された時間を有効利用しなくては。
そう思うと、ひとつでも多く本を読んで、文章を書きたい。この物語に出会えて良かった、と心から感じたSF 小説を読んだ。
『内なる宇宙』下巻 ジェイムズ・P・ホーガン著という本。
先日に上巻を読んで、『内なる宇宙、って何?』というブログを書いた。全体で4部作になるSF小説で、ボクにとって一生忘れられない作品になった。その完結編をようやく読了できた。
ファンタジー小説なら、迷わず『指輪物語』のシリーズをあげると思う。でもSF小説なら、このシリーズをボクの推薦する最高傑作として紹介する。とにかく読み終わるのが残念に思う物語だった。
上巻で『内なる宇宙』の秘密が少しだけ明かされている。そしてその世界の住人がウォークインという手法を使って、こちらの宇宙の人間の魂を塗り替えてしまう。その『内なる宇宙』の正体が、下巻で明らかにされている。
太陽系を離れた惑星での出来事だけれども、その惑星の住人は地球人と同じ起源を持つ。ゆえに、地球人も見過ごすことはできない。この物語の背景にある危機は、『内なる宇宙』の住人たちによる、惑星乗っ取りという陰謀だった。
そして驚いたことに『内なる宇宙』は、その惑星を管理しているAIが創造したものだった。といっても、その世界の住人たちは、ボクたちと同じように『自我』を持って大勢の人たちが生活している。
情報素子がビックバンと同じように宇宙を構成した結果、別の宇宙が構成されたということ。そしてそのAIを通じて、こちらの宇宙とつながっている。この物語を読んでいると、ボクたちの宇宙も未知のAIが創造したのではと思ってしまう。
だけど『内なる宇宙』は物理法則が制限されてるので、ボクたちが存在する宇宙とはちがう。魔法が存在していて、いわゆる神話の世界だった。つまり地球人に伝わる神話の起源は、その『内なる宇宙』からウォークインした住人が、人間の心に植え付けたものだったという設定になっている。
物語の展開としては、『内なる宇宙』で陰謀を企む組織の行動を阻止することで終わる。だけどそこに至る世界観に触れてしまうと、これは本当のことじゃないかと思ってしまうほどリアリティが高い。こんなSF小説があるなんて、今まで知らなかった自分が恥ずかしい。
古い作品だけれど、今読んでも違和感はない。むしろ現代の人でも新しいものを感じるはず。少しでも興味を持たれた人は、最初の作品である『星を継ぐもの』から読むこと。でないと、この完璧な世界観を理解できないと思う。これでハントやダンチェッカーの冒険が終わりだと思うと、さびしいよなぁ。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。