消滅させられるのは何?
午後4時過ぎになって、神戸に暴風波浪警報が出た。たしかに強い風が部屋のなかを通過している。いよいよ台風が近づいてきた雰囲気。
おかげで涼しく過ごせるけれど、やはり先日の豪雨の被災地のことを思うと、大雨が気になるところ。ボクが暮らす神戸市灘区でも、住宅近くの崖が崩れて復旧してない地域がある。まだ雨は降っていないけれど、おそらく深夜には大雨になるだろう。心配だよね。
豪雨被害の反省があったせいか、ネットを見ていると早めに避難準備や避難勧告が出ているみたい。神戸も夜になると、そうした情報が出るだろうと思う。とにかくヤバい地域で暮らしている人は、明るいうちに避難するべき。
先日の豪雨のとき、報道番組で絶句する光景を見た。避難指示が出ている地域で、報道陣が声をかけても絶対に避難しようとしない年配の男性がいた。
「避難はしない。死んでもかまわない」とのこと。
こういう人が、二次災害を引き起こすんだよね。マジで腹が立った。もし家が流されて遭難するようなことがあったら、消防や警察の人が危険を承知で捜索することになる。前回の豪雨でも、若い警察官が二次災害で亡くなっている。
あんたが死ぬのは勝手だけれど、自分のわがままのために若い命を道連れにしないで欲しい。まぁ、自分の命をどうでもいいと思っているような人に、他人の命の心配をしろというほうが無理かもしれないけれど。こんなバカな人が出ないことを祈るしかない。
人間というのは危機が迫ったとき、その人の本質が見えるもの。その様子を見事に描いた小説を読んだ。
『消滅』恩田陸 著という本。
この小説は、ボクのように予備知識なしで読むほうがいい。そうすると止まらなくなるから。物語の舞台は東京近郊の国際空港。日本人が入国審査を受ける窓口で事件が起きる。
突然けたたましいサイレンが鳴り、入国ゲートが閉じられる。空港職員は一斉に姿を消す。さらに携帯電話が一斉に使用不可になってしまう。そのうえ爆発音が聴こえ、遠くで黒い煙が見えている。
まだ日本に入っていない。どこの国でもない宙ぶらりんの場所。そこでこんなことになったら、誰でもパニックになるだろう。ようやく入国審査が開始されるが、やけに時間がかかる。日本人が日本に入るときは、普通はスムーズに進む。ところがどうも変。
そうして12人の男女が別室へ連行される。まだ小さい子供がいる母と子の姿もある。彼らに共通しているのは、この時間帯に入国したこと。日本国籍があること。そして4月の29日に品川のカフェに行った事実があること。それだけで集められる。
この男女にかけられたのは、テロリストの容疑だった。以前からテロが表明されていて、テロリストはスリーパーだという情報が確認されている。つまり過去に犯罪歴がない人間だということ。そして『何か』を消滅させる計画らしい。
ところがテロリストだと断定する決め手がない。当局もどのようなテロが起きるか把握していない。そこでこの12人に課せられたのは、全員で話し合って誰がテロリストなのかを見つけること。それまで誰も家に帰ることができない。その解明を監視するのは、新たに開発された女性型のアンドロイドだった。
おりしもこれまで経験したことがない大型の台風が近づいている。深夜になると空港は完全に孤立化してしまう。はたしてテロリストは誰なのか? そしてテロリストが消滅させようとしているものは何なのか?
さすが恩田陸さん。この発想はなかなかできるものじゃない。単行本で520ページほどある長編だけれど、一気に読めてしまう。それぞれの人がそれぞれの事情を抱えている。そして正体不明の人物もいる。少しずつ実態が明らかになる過程を、思い切り楽しむことができた。
結論は言わないでおこう。だけどハッピーエンドなので安心して読める。アンドロイドのキャラが最高だった。ちょっと変わっているけれど、かなり面白い小説だった。オススメだよ〜!
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