謎はこうして作る
小説の構想において、もっとも慎重に考えるのが『謎』。
謎というのはミステリー特有のものではなく、物語全般に通じて絶対的に必要なもの。恋愛映画だって、なぜ主人公が相手を好きになるかという『謎』が提示されないとつまらない。
小説でも映画でも、謎があるからこそ先へ進もうとする。そしてその謎が明らかになることで、物語のラストでカタルシスを覚える。面白い物語はジャンルを問わず、謎の配置が巧妙で効果的。
今日観た映画は、『謎はこうして作る』という見本のような素晴らしい作品だった。
『フライト・ゲーム』(原題:Non-Stop)という2014年のアメリカ映画。写真のとおり、リーアム・ニーソンとジュリアン・ムーアが共演している。
この映画は最初から謎が提示される。リーアム・ニーソンが演じるビルが、何者のなのかわからない。アル中であることがわかる程度で、どうにも普通じゃない。怪しいメールを受けてロンドン行きの航空機に搭乗するシーンなんか、もしかしたら彼はテロリストかと思ってしまう。
ところがビルは航空保安官。離陸と同時に犯人からのメールを受ける。20分以内に1億5000万ドルを送金しないと、乗客を1人ずつ殺していくと脅される。そしてそのとおりに人が死んでいく。
犯人が機内にいるのはまちがいない。ところがビルの私生活を調べ尽くしている犯人は、彼がテロリストであるかのように周囲へ思わせる。乗客のなかから犯人を見つけなくてはいけないのに、自分が疑われてしまう。そのうえ、犯人は爆弾を機内に持ち込んでいた。
まだ観ていない人のためにネタバレはしないけれど、とにかく謎をうまく散りばめている。それがめちゃ面白い。
作家の東野圭吾さんが、小説における謎について述べていたことがある。物語の中心となる謎を配置しつつ、小さな謎を散りばめる。そして読者に少しずつ謎を明かしつつ、大元の謎の解明に導いていく、という解説だった。
この映画はまさにそのとおりの内容。軸となる謎は、犯人は誰なのか? ということ。でもそれ以外に、操縦室にいた機長を殺した方法や、爆弾をどうして機内に持ち込んだかの謎が提示され、ビルによって少しずつ解明されている。そしていよいよ、ラストになって犯人が明らかになるという展開。
ハラハラドキドキの連続で、突っ込みどころも少ない。爆弾を見つけたんだったら外に捨てればいいじゃないかと思っても、それができない理由まで用意されている。言葉にできない緊張感に包まれたまま、観客を最後まで引きつける見事な作品だった。
主演の二人はもちろん、他の俳優さんの演技も素晴らしい。観て損はない映画だと思う。
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